八王子不動産売買専門の株式会社cocoro不動産の柴田のブログです。

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共有私道の通行・掘削承諾書とは?

不動産を売却する際、前面道路が「私道」である場合には、単に道路に接しているかどうかだけでなく、その私道を将来にわたって安全に使えるかどうかが重要になります。

特に、複数人で所有している共有私道の場合、「通行承諾書」や「掘削承諾書」が取得できているかどうかによって、買主の安心感、住宅ローン審査、建替えのしやすさ、将来のライフライン工事の可否に大きな影響が出ることがあります。

今回は、共有私道の通行・掘削承諾書とは何か、不動産売却時にどのような点を確認すべきかを、専門的な視点から解説します。

共有私道とは?

共有私道とは、道路として利用されている土地を複数人で共有している私道のことです。

例えば、分譲地の入口から奥の区画へ向かう道路部分を、各宅地所有者が持分割合で共有しているケースがあります。

登記簿上では、道路部分の土地について「持分何分の何」という形で所有権が登記されていることが多く、各宅地所有者が私道の一部を共同で所有している状態です。

一方で、私道には共有型だけでなく、道路を複数の筆に分け、各所有者が一部ずつ単独所有している「持ち合い型」の私道もあります。

この場合、見た目は一本の道路であっても、登記上は複数の土地に分かれており、掘削や通行の承諾を誰から取得すべきかが複雑になることがあります。

不動産売却では、まず前面道路が公道なのか私道なのか、私道であれば誰が所有しているのか、売却対象不動産に私道持分が含まれているのかを確認することが重要です。

通行承諾書とは?

通行承諾書とは、私道所有者が、対象不動産の所有者やその承継人に対して、私道を通行することを承諾する書面です。

ここでいう通行には、徒歩、自転車、自家用車、工事車両、緊急車両などが含まれる場合があります。

ただし、どこまで認められるかは承諾書の記載内容によります。

たとえば「日常生活上必要な範囲での通行を承諾する」とだけ書かれている場合と、「建築工事車両、上下水道・ガス・電気等の工事車両の通行を含む」と明記されている場合では、将来の安心感が大きく異なります。

不動産売買では、単に「今まで問題なく通っていた」という事実だけでは不十分なことがあります。

将来、所有者が変わった後に私道所有者との関係が悪化したり、相続によって所有者が増えたりすると、通行をめぐるトラブルが発生する可能性があるためです。

そのため、通行できる権限をできる限り書面で明確にしておくことが重要になります。

掘削承諾書とは?

掘削承諾書とは、私道の下に上下水道管、ガス管、電気管、通信管などを新設・交換・修理するために、私道を掘削することを私道所有者が承諾する書面です。

不動産の建替えや大規模リフォームでは、既存のライフラインをそのまま利用できるとは限りません。

給水管の口径変更、下水道接続替え、ガス管の引込み直し、老朽管の更新などが必要になることがあります。

その際、配管が共有私道の下を通っている場合、私道を掘削する必要が生じます。

掘削承諾がないと、工事の段階で私道所有者から反対されるリスクがあります。

建築確認そのものは取得できたとしても、実際のライフライン工事が進められなければ、建物の建築や使用に大きな支障が出ることがあります。

そのため、掘削承諾書は、建替え可能性や住宅ローン審査においても重要な確認資料になります。

なぜ売却時に通行・掘削承諾書が重要なのか

共有私道に接する不動産は、買主にとって「将来も安心して利用できるか」が大きな判断材料になります。

特に戸建てや土地の売買では、買主は将来の建替え、リフォーム、ライフライン更新、車両通行などを前提に購入を検討します。

そのため、通行や掘削について不安が残る物件は、買主が慎重になりやすく、価格交渉の材料になることがあります。

また、金融機関も担保評価の観点から、前面道路の権利関係を確認することがあります。

私道持分がない場合や、通行・掘削承諾書が取得できていない場合、金融機関によっては融資審査で慎重に見られることがあります。

つまり、通行・掘削承諾書は単なる近隣同士の確認書ではなく、不動産の流通性、担保性、建替え可能性に関わる重要書類といえます。

建築基準法上の道路と、民事上の通行権は別問題

共有私道を考える際に特に注意したいのは、「建築基準法上の道路であること」と「民事上、自由に通行・掘削できること」は同じではないという点です。

建築基準法上の道路に該当していて、接道義務を満たしている場合でも、その道路が私有地である以上、所有権の問題は別に残ります。

建築基準法上は道路として扱われていても、私道所有者との間で通行や掘削の承諾関係が明確でなければ、将来の工事や利用をめぐってトラブルになる可能性があります。

実務上、この点を混同してしまうと危険です。

「役所で道路扱いになっているから大丈夫」と安易に判断するのではなく、建築基準法上の道路種別、登記上の所有者、私道持分の有無、通行・掘削承諾の有無を分けて確認する必要があります。

共有私道で確認すべき道路種別

売却前には、役所で前面道路の種別を確認することが重要です。

代表的なものとして、建築基準法第42条第1項第1号道路、位置指定道路、建築基準法第42条第2項道路などがあります。

位置指定道路の場合、道路位置指定図や指定年月日、幅員、延長、転回広場の有無などを確認します。

42条2項道路の場合、中心線後退やセットバックの有無を確認する必要があります。

私道の場合、道路としての指定や扱いがあっても、所有者の承諾関係とは別の問題です。

そのため、道路種別の調査と同時に、登記簿、公図、地積測量図、道路台帳、位置指定図、上下水道管図、ガス管図などを総合的に確認することが大切です。

承諾書には誰の署名・押印が必要か

共有私道の場合、原則として共有者全員から承諾を取得することが望ましいです。

特に、将来の建替えや掘削を前提とする場合、共有者の一部だけから承諾を取得しても、他の共有者から異議が出る可能性が残ります。

もっとも、私道の所有形態や利用状況によって、必要な承諾者の範囲は変わることがあります。

共有型であれば共有者全員、持ち合い型であれば掘削や通行の対象となる筆の所有者、私道全体に管理規約や協定がある場合にはその内容を確認する必要があります。

また、登記名義人が死亡している場合には、相続人の調査が必要になることがあります。

相続登記が未了のまま放置されている私道では、現在の実質的な権利者を確認するだけでも時間がかかることがあります。

売却活動を開始してから慌てて調査すると、契約や引渡しのスケジュールに影響することがあるため、早めの確認が必要です。

通行・掘削承諾書に入れておきたい主な内容

通行・掘削承諾書には、少なくとも次のような内容を明確にしておくことが望ましいです。

まず、対象となる私道の所在・地番・持分関係を明記します。

次に、通行を認める対象者として、現在の所有者だけでなく、その承継人、買主、同居家族、賃借人、工事業者、ライフライン事業者などを含めるかを検討します。

また、通行の範囲として、徒歩、自転車、自動車、工事車両、緊急車両などをどこまで認めるかも重要です。

掘削については、上下水道、ガス、電気、通信、排水設備などの新設・交換・補修・撤去・維持管理のための掘削を認めるかを記載します。

さらに、工事後の原状回復、工事前の通知、費用負担、第三者への承継、承諾料の有無、将来の所有者変更後も効力を維持する旨なども重要な項目です。

特に売買実務では、「本承諾は対象不動産の所有権を取得する者およびその承継人にも及ぶ」といった承継性の記載が重要になります。

承諾書がない場合の売却リスク

通行・掘削承諾書がない場合でも、必ず売却できないわけではありません。

しかし、買主にとっては不安材料になります。

特に建替えを前提に購入する買主の場合、将来の掘削工事ができるかどうかは非常に重要です。

承諾書がない場合、買主側から「取得を売主の引渡し条件にしてほしい」と求められることがあります。

また、承諾が取得できない場合には、契約解除条件を設ける、価格に反映する、買主がリスクを理解したうえで購入するなどの調整が必要になることがあります。

重要なのは、承諾書がないこと自体を隠さないことです。

私道の権利関係は、買主の購入判断に大きく影響する事項です。

不動産会社としても、重要事項説明書や売買契約書の特約で、私道の状況、承諾書の有無、将来の掘削・通行に関するリスクを明確に説明する必要があります。

「昔から通っているから大丈夫」とは限らない

共有私道では、「近所の人たちはみんな普通に使っている」「これまで問題になったことはない」というケースがよくあります。

もちろん、長年平穏に利用されてきた事実は重要です。

しかし、不動産売買では、買主や金融機関に対して、その利用関係をどこまで客観的に説明できるかが問われます。

口頭の了解や慣習だけでは、所有者が変わった後に同じ関係が維持されるとは限りません。

相続によって共有者が増えたり、遠方の相続人が権利者になったり、近隣関係が変化したりすると、従前は問題にならなかったことが突然問題化することがあります。

そのため、売却前にはできるだけ書面化しておくことが望ましいといえます。

承諾料を求められることはあるか

私道の通行・掘削承諾を依頼する際、承諾料を求められることがあります。

承諾料の有無や金額は、私道の所有形態、地域性、過去の経緯、工事内容、私道所有者との関係によって異なります。

実務上は、無償で承諾を得られる場合もあれば、一定の金銭負担や復旧費用、工事条件を求められる場合もあります。

重要なのは、承諾料が発生する可能性を早い段階で把握し、売主・買主のどちらが負担するのかを契約前に明確にすることです。

売買契約後に承諾料の問題が発覚すると、費用負担をめぐってトラブルになることがあります。

売買契約書の特約で注意すべきこと

共有私道の承諾書が未取得の場合には、売買契約書の特約が非常に重要になります。

たとえば、「売主は引渡しまでに私道所有者全員から通行・掘削承諾書を取得するものとする」と定める場合があります。

一方で、承諾取得が難しい場合には、「買主は承諾書が未取得であることを確認し、将来の通行・掘削について私道所有者から異議を受ける可能性があることを承知のうえ本物件を買い受ける」といった説明型の特約を入れることもあります。

ただし、買主に不利な内容を形式的に記載すれば足りるわけではありません。

実際にどのようなリスクがあるのかを具体的に説明し、買主が理解したうえで契約することが大切です。

不明確な特約や過度に楽観的な説明は、後日の紛争につながる可能性があります。

売却前に確認したい資料

共有私道に接する不動産を売却する際は、次の資料を確認しておくと安心です。

登記簿謄本では、対象不動産だけでなく私道部分の所有者・持分も確認します。

公図では、私道の筆の形状や対象地との接道関係を確認します。

地積測量図や道路位置指定図があれば、道路幅員や境界の確認に役立ちます。

役所では、建築基準法上の道路種別、セットバックの有無、位置指定道路の内容を確認します。

水道局、下水道担当部署、ガス会社では、管の埋設状況や引込み経路を確認します。

過去の売買契約書、重要事項説明書、承諾書、覚書、協定書が残っていれば、既存の権利関係を確認する重要な資料になります。

共有私道の売却では「早めの調査」が価格と安全性を左右する

共有私道の問題は、売却活動を始めてから買主に指摘されて初めて発覚することがあります。

しかし、その時点で承諾書を取得しようとしても、共有者が遠方に住んでいる、相続が発生している、連絡先が分からない、押印を拒まれるといった問題が出ることがあります。

そうなると、契約日や引渡し日が遅れるだけでなく、買主の購入意欲が下がることもあります。

場合によっては、価格交渉や契約解除につながることもあります。

だからこそ、共有私道に接する不動産を売却する場合は、査定前または販売開始前の段階で、道路調査と権利関係の確認をしておくことが重要です。

まとめ

共有私道の通行・掘削承諾書とは、私道を通行すること、そして上下水道・ガス・電気・通信などの工事のために私道を掘削することについて、私道所有者から承諾を得るための書面です。

共有私道に接する不動産では、道路に接していることだけでなく、その道路を将来にわたって問題なく利用できるかが重要になります。

特に、建替えやライフライン工事を想定する場合、掘削承諾の有無は大きな意味を持ちます。

売却前には、私道の所有者、持分、道路種別、私道持分の有無、通行・掘削承諾書の有無、承諾の範囲、承継性、費用負担を確認しておくことが大切です。

共有私道の問題は専門性が高く、登記、建築基準法、民法、重要事項説明、近隣関係が複雑に絡みます。

不安がある場合は、早い段階で不動産会社や専門家に相談し、売却前にリスクを整理しておくことをおすすめします。

よくある質問(Q&A)

Q1. 通行承諾書がないと売却できませんか?

売却自体が必ずできないわけではありません。

ただし、買主や金融機関が慎重に判断する可能性があります。

特に建替えや車両通行を前提とする場合、通行承諾書の有無は重要な確認事項になります。

Q2. 掘削承諾書がないと建替えできませんか?

建築確認上の問題と、実際にライフライン工事ができるかどうかは別問題です。

建築確認が取れる場合でも、私道の掘削に私道所有者の承諾が必要になることがあります。

建替えを想定する場合は、掘削承諾の有無を事前に確認することが重要です。

Q3. 共有私道の持分を持っていれば承諾書は不要ですか?

共有持分があるからといって、すべて自由に通行・掘削できるとは限りません。

共有物である以上、他の共有者との関係を考慮する必要があります。

実務上は、将来のトラブルを防ぐため、共有者間で通行・掘削の承諾や協定を確認しておくことが望ましいです。

Q4. 承諾書は実印でなければいけませんか?

法律上、必ず実印でなければならないと一律に決まっているわけではありません。

ただし、不動産売買実務では、本人確認や証拠性を高めるため、実印押印と印鑑証明書の添付を求めるケースがあります。

金融機関や買主側の要望も踏まえて判断する必要があります。

Q5. 私道所有者が承諾してくれない場合はどうなりますか?

承諾が得られない場合、売買条件の見直し、契約条件への反映、価格調整、専門家への相談が必要になります。

安易に「問題ありません」と説明するのは危険です。

承諾が得られない事実とそのリスクを、買主に正確に説明することが重要です。

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【本ブログ監修者】

★柴田祐介(しばた ゆうすけ)

1981年生まれ。群馬県出身。大学卒業後、異業種を経て、その後不動産会社で八王子・町田・川崎にて16年間勤務。(在職期間中の2年間で、建築・デザイン専門学校にて認定単位取得後卒業)

〖保有資格〗

宅地建物取引士、二級建築士、2級FP技能士、相続アドバイザー二級、秘書検定2級、既存住宅状況調査技術者。