高度地区って?|土地・建物の「高さ」を左右する重要な都市計画を専門的に解説
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不動産の物件資料や重要事項説明書を見ていると、「第1種高度地区」「第2種高度地区」といった記載を目にすることがあります。
「高度地区=高い建物を建てるための地域?」と思われる方もいらっしゃいますが、実際には意味が異なります。
高度地区とは、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める都市計画上の地域地区です。
特に住宅地では、周囲の日照・採光・通風などの住環境を守るため、建物の高さを制限する目的で指定されているケースが多くあります。都市計画法では、高度地区を「用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区」としています。
【根拠:都市計画法/e-Gov法令検索】
https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC0000000100
■高度地区は「都市計画」で決め、「建築基準法」で守らせる
高度地区を理解するうえで重要なのが、都市計画法と建築基準法の関係です。
まず、都市計画法に基づいて「この地域は第1種高度地区」などと都市計画決定されます。
そして建築基準法第58条では、高度地区内の建築物について、高度地区に関する都市計画で定められた高さ制限に適合しなければならないと規定されています。
つまり、
都市計画法=どこを、どのような高度地区にするのかを決める
建築基準法=実際に建てる建物をそのルールに適合させる
という関係です。
【根拠:建築基準法第58条/e-Gov法令検索】
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
■「高度地区」と「高度利用地区」はまったく別物
名称が似ているため混同されやすいのが「高度利用地区」です。
高度地区は基本的に建築物の高さをコントロールする制度です。
一方、高度利用地区は、容積率や建蔽率、建築面積、壁面位置などを総合的に定め、市街地の合理的かつ健全な高度利用を図る制度です。
したがって、
「高度地区だから土地を高度利用できる」
という意味ではありません。
不動産調査では「高度地区」と「高度利用地区」を明確に区別する必要があります。
■八王子市には第1種・第2種・第3種高度地区がある
八王子市では、第1種高度地区・第2種高度地区・第3種高度地区が定められています。
特徴的なのは、単純に「高さ10mまで」という絶対高さだけで制限するのではなく、建物の各部分から真北方向の道路境界線または隣地境界線までの水平距離によって、許容される高さが変化することです。
【八王子市公式|日影規制値、斜線制限、高度地区について】
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/jigyosha/005/10101/p030459.html
■第1種高度地区
八王子市の第1種高度地区では、建築物の各部分の高さについて、
高さ ≦ 真北方向の水平距離 × 0.6 + 5m
という制限があります。
たとえば、建物のある部分から真北方向の隣地境界線まで4mだった場合、
4m × 0.6 + 5m = 7.4m
となります。
つまり、その位置では原則として7.4m以下に建物を納める必要があるという考え方です。
建物を北側境界線から離すほど許容高さが高くなるため、敷地形状や建物配置によって、建築できるボリュームが大きく変わります。
■第2種高度地区
第2種高度地区では、真北方向の水平距離が8m以内の場合、
高さ ≦ 水平距離 × 1.25 + 5m
となります。
8mを超える部分については、
高さ ≦(水平距離-8m)×0.6+15m
という別の計算式になります。
第1種高度地区より比較的建築可能な高さを確保しやすい設定です。
■第3種高度地区
第3種高度地区では、真北方向の水平距離が8m以内の場合、
高さ ≦ 水平距離 × 1.25 + 10m
8mを超える場合には、
高さ ≦(水平距離-8m)×0.6+20m
となります。
第1種、第2種、第3種と進むにつれて、一般的には建築可能な高さの自由度が大きくなります。
■重要なのは「真北方向」
八王子市の高度地区では「北側」という表現ではなく、正確には真北方向の水平距離を基準として計算します。
ここは建築実務では非常に重要です。
敷地図を見て「こちら側がだいたい北だから」と判断するのではなく、建築設計では正確な真北方向を基準として建物の各部分について検討します。
特に、
- 北側隣地境界線に近い建物
- 3階建住宅
- 屋根形状が複雑な住宅
- 北側に高さのある部分を配置する計画
- 狭小地
- 変形地
などでは、高度地区が建築プランに大きく影響することがあります。
■北側が道路の場合は有利になることも
八王子市の高度地区では、真北方向に前面道路がある場合、原則として道路の反対側の境界線までの距離を使って高さを計算します。
そのため、北側が隣地の場合よりも、北側が道路になっている敷地のほうが水平距離を確保でき、高度地区による高さ制限が緩やかになるケースがあります。
これは土地の建築可能ボリュームを考える際には非常に重要なポイントです。
同じ面積・同じ用途地域・同じ建蔽率・容積率であっても、
道路の位置、方角、間口、敷地形状によって建てられる建物が変わる
ということです。
■「容積率が余っている=その面積まで建てられる」ではない
土地を見る際には、
「建蔽率60%、容積率200%だから、かなり大きな建物が建てられる」
と考えてしまいがちです。
しかし、建築可能な建物の大きさは建蔽率・容積率だけで決まりません。
建築基準法や都市計画上の高さ規制、さらに高度地区など複数の規制を重ね合わせて、最終的な建築可能ボリュームを検討する必要があります。国土交通省も、高度地区による高さ制限を建築基準法第58条に基づく集団規定の一つとして整理しています。
したがって、
指定容積率200%でも、高度地区等の形態規制によって実際には容積率を使い切れない
という土地は十分にあり得ます。
■高度地区と北側斜線は同じもの?
似ていますが、法律上は別の制度です。
建築基準法第56条による北側斜線制限と、高度地区による高さ制限は別々に検討する必要があります。
さらに土地によっては、
道路斜線制限
隣地斜線制限
北側斜線制限
日影規制
高度地区
第一種・第二種低層住居専用地域等の絶対高さ制限
地区計画による高さ制限
などが関係する場合があります。
八王子市も「日影規制値・斜線制限」と「高度地区による高さ制限」を分けて案内しています。
つまり実際の建築計画では、複数の高さ規制の中で最も厳しく作用する条件を満たす必要があるということになります。
■土地売買では高度地区まで確認することが重要
高度地区は、土地の売買においても重要な調査項目です。
特に注意したいのが、
「現在建っている建物と同じ大きさの建物が、将来も建てられるとは限らない」
という点です。
建築当時から都市計画や法令が変更されている場合や、既存建物が現在の規制条件と異なる状況にある場合には、建替え時の建築可能ボリュームが変化する可能性があります。
そのため中古住宅や古家付き土地では、単に現在の建物の延床面積を見るのではなく、
「現在の法令・都市計画の条件で建て替えた場合、どの程度の建物が建築できるのか」
という視点が重要です。
■マンション・アパート用地では特に重要
高度地区は、一戸建住宅以上に共同住宅や収益物件の計画へ影響することがあります。
例えば容積率200%の土地であっても、高度地区によって北側部分を大きくセットバックしなければならなければ、計画できる住戸数や延床面積が減少する可能性があります。
そのため土地の収益性や事業性を検討するときは、
「容積率」だけではなく「実際に建築できる立体的なボリューム」
を見る必要があります。
不動産価格についても、最終的にはこうした建築可能性を含めて個別に評価することが重要です。
■八王子市で高度地区を確認する方法
八王子市では、「はちおうじマップ」で都市計画等の事業者向け情報を確認できます。
【八王子市公式|はちおうじマップ】
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/tantoumadoguchi/002/003/p034975.html
ただし、インターネット上の都市計画情報だけで建築可否を最終判断することはおすすめできません。
八王子市も、敷地がどの高度地区による高さ制限を受けるかについては都市計画課への確認を案内しています。
具体的な建築計画については、設計者や確認申請を行う指定確認検査機関等を含めて確認することが重要です。
■不動産会社として重要なのは「高度地区名を伝えるだけではない」
重要事項説明書に、
「第1種高度地区」
と書くだけであれば、それほど難しい調査ではありません。
しかし、不動産を購入する方にとって本当に重要なのは、
「その規制によって、この土地ではどのような建物が建てられるのか」
という部分です。
特に建築目的で土地を購入する場合には、
用途地域
建蔽率
容積率
高度地区
日影規制
各種斜線制限
地区計画
前面道路
道路幅員
敷地形状
高低差
などを総合的に確認しなければ、その土地の本当の建築条件は見えてきません。
高度地区は、その中でも建物の形状を直接左右する重要なチェック項目の一つです。
■Q&A|高度地区についてよくある質問
Q1.第1種高度地区だと2階建しか建てられない?
必ずしもそうではありません。
高度地区は「階数」を直接制限する制度ではなく、建物各部分の高さを制限する制度です。
敷地の広さ、北側境界線からの距離、道路位置、建物配置、屋根形状などによっては3階建を計画できる場合もあります。
最終的には具体的な建築計画による検討が必要です。
Q2.高度地区がない土地なら自由に高い建物を建てられる?
いいえ。
高度地区の指定がなくても、用途地域、道路斜線、隣地斜線、北側斜線、日影規制、地区計画など別の高さ制限が適用される可能性があります。
Q3.第1種高度地区の土地は価値が低い?
一概にはいえません。
高度地区は周辺の日照・採光・通風など住環境を守る役割を持つ制度でもあるため、低層住宅地では良好な住環境の形成につながる側面があります。
一方、共同住宅や大きな建物を計画する土地では、建築可能ボリュームが事業性に影響する可能性があります。
土地の価値は、高度地区だけではなく立地、用途地域、建蔽率、容積率、道路条件、敷地形状などを総合的に評価する必要があります。
Q4.土地を買う前に高度地区まで調べたほうがいい?
建築目的で購入するのであれば、非常に重要です。
特に「3階建を建てたい」「二世帯住宅を建てたい」「アパートを建築したい」といった具体的な希望がある場合には、契約前に建築会社や設計者へ敷地情報を渡し、希望する建物が成立するか確認しておくことをおすすめします。
■まとめ|高度地区は「土地の立体的な利用価値」を左右する
高度地区は、単に重要事項説明書に記載される都市計画上の名称ではありません。
その土地に、どの位置で、どのくらいの高さまで建物を建てられるのかを左右する重要な規制です。
特に八王子市では、第1種・第2種・第3種高度地区が設定され、真北方向の境界線等までの距離によって建物各部分の高さが制限されています。
土地を購入するときも、売却するときも、
「建蔽率・容積率は何%か」
だけを見るのでは不十分です。
高度地区、斜線制限、日影規制、地区計画などまで確認して初めて、その土地が持っている本来の建築可能性が見えてきます。
土地の価格や将来の建替え可能性を考えるうえでも、「何㎡の土地なのか」という平面的な視点だけではなく、どの程度の建物を立体的に建築できる土地なのかという視点が重要です。
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【本ブログ監修者】

株式会社cocoro不動産 代表取締役
★柴田祐介(しばた ゆうすけ) 1981年生まれ
大手不動産会社にて、八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
【保有資格】宅地建物取引士/二級建築士/2級FP技能士/相続アドバイザー2級/既存住宅状況調査技術者(受講済)