八王子不動産売買専門の株式会社cocoro不動産の柴田のブログです。

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高圧線下の土地や住宅について

土地や住宅を探していると、敷地の上空を大きな送電線が通っていたり、近くに送電鉄塔が建っていたりする物件を見かけることがあります。

一般には「高圧線の下の土地」「高圧線下地」などと呼ばれていますが、不動産売買では単に「高圧線があるから価格が安い」「家を建てられない」と単純に判断することはできません。

確認すべきなのは、

  • 送電線の電圧
  • 電線が敷地のどの位置を通過しているか
  • 地役権等が設定されているか
  • 建築物にどのような制限があるか
  • 電力会社との契約内容
  • 線下補償の有無
  • 土地利用への実際の影響
  • 市場で買主がどのように評価するか

などです。

今回は、高圧線下の土地や住宅を売却・購入する際に知っておきたいポイントについて、不動産実務の視点から詳しく解説します。

1.そもそも「高圧線」とは?

一般の方が「高圧線」と呼んでいるものの中には、法律上・技術上は「特別高圧」に分類される送電線も多くあります。

電気設備に関する区分では、交流の場合、

600V以下:低圧
600Vを超え7,000V以下:高圧
7,000Vを超えるもの:特別高圧

という区分があります。

したがって、大型の鉄塔を使って電力を送っている送電線の多くは、厳密には「特別高圧架空電線」です。

不動産実務では一般的な表現として「高圧線下」と呼ばれることが多いため、本記事でも分かりやすさを優先して「高圧線」と表現します。

2.高圧線が土地の上を通っているだけで建築できないわけではない

ここは非常に誤解されやすいポイントです。

「高圧線の真下には家を建てられない」

と思われることがありますが、必ずしもそうではありません。

重要になるのは、

送電線と建築物との間に必要な離隔距離を確保できるか

という点です。

電気設備については安全確保のための技術基準が定められており、送電線の電圧や電線の種類などによって必要な離隔距離が変わります。

つまり、

「高圧線が敷地を通っている=建築不可」

ではなく、

「どの位置まで、どの高さの建物を建築できるのか」

を個別に調査する必要があります。

実際、国土交通省の資料でも、送電線と建築物との離隔距離を確保したうえで土地利用を検討する事例が示されています。

3.特に重要なのが「地役権」

高圧線下の土地を調査するとき、登記簿の**権利部(乙区)**を確認すると「地役権設定」と記載されていることがあります。

地役権とは、簡単にいえば、

他人の土地を一定の目的のために利用する権利

です。

送電線の場合、電力会社が土地上空に送電線を設置・維持するために地役権を設定しているケースがあります。

例えば登記には、

「送電線路を設置し、その保守のため土地に立ち入ること」

あるいは、

「送電線に支障となる建造物を設置しないこと」

などの内容が定められている場合があります。

このため、高圧線下の土地については登記簿を見るだけではなく、

地役権設定契約の具体的内容

まで確認することが重要です。

国土交通省の資料でも、送電線下地では電力会社と土地所有者との間で地役権設定契約を行う方法が一般的な手法の一つとして紹介されています。

4.土地全体ではなく「一部分だけ」が地役権の対象になることもある

例えば300㎡の土地があったとして、その土地の上空を送電線が斜めに横切っている場合を考えてみます。

この場合、

土地300㎡すべてに同じ制限がかかるとは限りません。

例えば、

300㎡のうち80㎡だけが地役権設定範囲

ということもあります。

この違いは土地評価において非常に重要です。

建物を配置する部分には影響がなく、庭・駐車場部分だけが線下地になっているのであれば、土地利用への影響が比較的小さいケースがあります。

一方、

敷地中央を送電線が通過している

場合には建築計画の自由度が低くなる可能性があります。

したがって「高圧線下である」という事実だけでなく、

土地のどの部分が影響を受けているのか

を見る必要があります。

5.「線下補償」とは?

送電線の設置によって土地利用に一定の制限が生じる場合、電力会社から土地所有者に対して補償が行われるケースがあります。

一般にこれを、

線下補償

などと呼びます。

ただし、

「高圧線の下なら毎年補償金がもらえる」

という意味ではありません。

契約形態によって異なり、地役権設定時に権利設定の対価として一括して支払われているケースもあります。

例えば何十年も前に地役権が設定されている土地では、現在の所有者ではなく、当時の所有者がすでに補償を受け取っているケースも考えられます。

そのため売却するときには、

「現在補償金を受け取っているか」

だけではなく、

どのような契約で送電線が設置されているのか

まで遡って確認することが大切です。

6.地役権が登記されていないケースもある

さらに注意したいのが、

送電線がある=必ず登記簿に地役権がある

とは限らないことです。

送電線の設置について、

  • 地役権
  • 債権契約
  • 区分地上権
  • その他の契約

など、異なる形で権利関係が整理されている場合があります。

そのため登記簿だけを確認して、

「地役権がないから制限はありません」

と判断するのは危険です。

高圧線が敷地上空を通っている場合には、必要に応じて送電線を管理している電力会社等へ照会し、

送電線の電圧、権利設定、建築制限、契約内容

などを確認することが重要です。

7.高圧線下の土地は価格が下がるのか?

売却相談で特に多いのが、

「高圧線が通っていると土地価格はどのくらい下がりますか?」

という質問です。

しかし、

一律に○%下がるという基準はありません。

価格への影響は土地ごとに大きく異なります。

例えば次のような条件で評価が変わります。

①送電線が土地の端を通っている

建物配置にほとんど影響しない場合には、土地利用上の影響は比較的小さくなる可能性があります。

②敷地中央を横断している

住宅の配置や高さに制約が出る場合には、利用価値への影響が大きくなる可能性があります。

③土地が広い

500㎡の土地のうち一部分だけが線下地なら、建物を線下部分から離して配置できる場合があります。

④土地が小さい

100㎡程度の土地の中央を送電線が横断している場合などは、建築計画への影響が相対的に大きくなることがあります。

⑤建築制限が強い

建物用途・高さ・配置等への影響が大きいほど、一般には土地利用価値への影響も大きくなります。

国土交通省関係資料でも、高圧線下地の評価では土地の面積・形状、送電線の通過位置、契約内容などによって影響の程度が異なることが示されています。

したがって、

「高圧線だから○%減額」

という査定ではなく、

その土地の最有効使用がどの程度阻害されるのか

を見ることが重要です。

8.物理的な制限だけでなく「市場性」も価格に影響する

不動産価格で難しいのがここです。

仮に法令上、普通に住宅を建築できる土地だったとしても、

買主が、

「鉄塔が気になる」

「景観が気になる」

「送電線の真下は避けたい」

と考えることがあります。

これは、

心理的・市場的な影響

です。

不動産価格は建築できるかどうかだけで決まるわけではありません。

購入希望者が何人いるかという「需要」も価格を左右します。

同じ住宅地で、

A土地:高圧線なし
B土地:高圧線あり

という2つの土地が同価格で販売されていれば、A土地を選ぶ人が一定数いることは想定されます。

したがって実際の査定では、

法的制限+物理的利用制限+市場性

を総合して判断する必要があります。

9.逆に「高圧線下だから悪い土地」と決めつける必要もない

一方で、高圧線下という理由だけで過度に評価を下げるのも適切ではありません。

例えば、

  • 敷地が広い
  • 建物配置に影響しない
  • 線下部分を駐車場や庭として利用できる
  • 日当たりや道路条件が良い
  • 駅や生活施設への利便性が高い

といった条件なら、十分に住宅地として利用できることがあります。

特に土地の一部分だけが線下地になっているケースでは、

線下部分を駐車場・庭・通路等として利用する

ことで、住宅部分への影響を抑えられることもあります。

高圧線下地を見る場合は、

「高圧線があるか」

ではなく、

土地全体をどのように利用できるのか

という視点が重要です。

10.住宅がすでに建っている場合はどう考える?

中古住宅の場合、

「すでに家が建っているから問題ない」

とも言い切れません。

現在の建物が建築された当時の条件と、将来建替えるときの条件が同じとは限らないためです。

例えば、

現在は2階建住宅が建っていても、

建替えの際には送電線との離隔距離や電力会社との契約条件を改めて確認する必要があります。

中古住宅を購入するときには、

現在建っているかどうかではなく、将来どのような建替えができるか

まで確認しておくと安心です。

11.高圧線と「健康への影響」はどう考えるべきか

高圧線の近くに住宅があると、

「電磁界は健康に影響しないのですか?」

と質問されることがあります。

この問題について、不動産会社が独自に、

「絶対安全です」

あるいは、

「健康被害があります」

と断定することは適切ではありません。

現在、日本では電力設備から発生する磁界について規制が設けられており、経済産業省によれば、電力設備から発生する磁界を200μT(マイクロテスラ)以下とする規制が2011年から導入されています。

また経済産業省の電磁界情報では、非常に強い電磁界による短期的な刺激作用については科学的知見が確立している一方、生活環境でみられるような比較的弱い電磁界への長期曝露については、健康影響を示す明確な証拠は確立していないと整理されています。

したがって不動産取引では、

公的機関が公表している情報を正確に伝え、最終的な判断は購入者自身にしていただく

という姿勢が重要だと考えます。

12.売却するときに確認したい資料

高圧線下の土地・住宅を売却する場合、できれば販売開始前に次の資料を確認しておきたいところです。

①土地全部事項証明書
②地役権図面
③公図
④地積測量図
⑤電力会社との契約書
⑥線下補償に関する資料
⑦送電線の電圧
⑧電線と建物との位置関係
⑨建築可能範囲
⑩過去の建築確認関係資料

特に重要なのが、

「地役権設定範囲」と「実際の送電線の位置」を土地図面上で確認すること

です。

文字だけで説明するよりも、図面上に送電線と制限範囲を示した方が、購入希望者にもはるかに理解してもらいやすくなります。

13.高圧線下の土地を売却するときは「先に調べる」ことが重要

高圧線下の土地について最も避けたいのは、

買主が決まった後になって、

「実は地役権がありました」

「建物の高さに制限がありました」

「この部分には建築できない可能性があります」

と判明することです。

これでは買主が不安になるだけでなく、住宅ローンや建築計画にも影響する可能性があります。

そのため高圧線下の土地ほど、

販売前の調査が重要

です。

調査した結果、

「この部分には制限がありますが、こちら側に住宅を配置すれば一般的な2階建住宅の計画が可能です」

などと具体的に説明できれば、単に、

「高圧線があります」

と説明するより買主も判断しやすくなります。

14.査定価格だけを見るのではなく「調査内容」を確認する

高圧線下地を売却するとき、不動産会社によって査定価格に差が出ることがあります。

しかし重要なのは査定額の高さだけではありません。

例えば、

「高圧線なので10%減です」

という査定と、

「送電線は敷地南側約○㎡を通過しています。地役権設定範囲を確認したところ住宅配置部分への影響は限定的と考えられます。ただし市場性を考慮して周辺成約事例と比較すると、この程度の価格帯が妥当です」

という査定では、根拠の深さが大きく異なります。

高圧線下地では、

どこまで調査したうえで価格を出しているのか

が非常に重要です。

15.八王子でも高圧線や鉄塔が通る住宅地は珍しくない

八王子市は市域が広く、住宅地の中や山林・農地周辺を送電線が通過している場所もあります。

そのため八王子で土地や戸建てを扱っていると、高圧線や送電鉄塔に関する調査が必要になるケースがあります。

同じ「高圧線下」でも、

  • 敷地の端だけを通る土地
  • 敷地中央を横断する土地
  • 鉄塔に近い土地
  • 建物の上空を通過する土地
  • 庭や駐車場部分だけを通る土地

では評価がまったく違います。

八王子のように土地の大きさや高低差、道路条件、造成状況などが地域によって大きく異なるエリアでは、

高圧線だけを単独で評価せず、土地全体の利用価値を確認すること

が特に重要です。

まとめ|高圧線下の土地は「高圧線がある」というだけでは評価できない

高圧線下の土地や住宅については、

「危ない土地」

「建築できない土地」

「必ず価格が大きく下がる土地」

と一括りにすることはできません。

重要なのは、

①どの送電線が通っているか
②地役権等があるか
③どこまでが権利設定範囲か
④建築物との離隔距離はどうなるか
⑤建築計画にどの程度影響するか
⑥線下補償等の契約はどうなっているか
⑦市場でどの程度影響するか

を一つずつ確認することです。

特に不動産売却では、高圧線という目に見える特徴があるからこそ、購入希望者から質問を受けやすくなります。

その際に重要なのは、不安を煽ることでも、逆に問題がないと言い切ることでもありません。

権利関係や建築条件を調査し、

「何が制限され、何ができるのか」

を具体的に整理して説明することが大切です。

高圧線下地は一般的な土地より確認項目が多い不動産です。

だからこそ、売却前の段階で登記・図面・電力会社との契約・建築への影響などを整理しておくことが、適正な査定とスムーズな売却につながります。

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★監修者プロフィール

柴田祐介(しばた ゆうすけ)

1981年生まれ。
大手不動産会社にて八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
建築について学んだ経験と、不動産売買の現場経験を活かし、土地・戸建て・マンションの売却について、建物・土地・法令・権利関係を含めた総合的な視点からご提案しています。

宅地建物取引士、二級建築士、2級FP技能士、相続アドバイザー二級、秘書検定2級、既存住宅状況調査技術者

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