高低差2mを超える土地は何が変わる?売却前に確認したい規制
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八王子市には、平坦な住宅地だけでなく、丘陵地を造成した住宅地や道路との高低差がある土地も数多くあります。
こうした土地を売却するとき、
「道路より2m以上高いけれど問題ないのか」
「擁壁が2mを超えていると売れないのか」
「古い擁壁でも建替えできるのか」
といったご相談をいただくことがあります。
特に「2m」という数字は、不動産・建築・造成の実務では重要な基準の一つです。
ただし、最初に理解しておきたいのは、
「土地に2mを超える高低差がある=直ちに規制対象になる」わけではない
ということです。
実際には、
「土地全体の高低差」
「がけの高さ」
「擁壁の高さ」
「盛土・切土の高さ」
を分けて確認しなければなりません。
ここを混同すると、売却価格や建替えの可否について誤った判断をしてしまう可能性があります。
1.なぜ「2m」が重要なのか
東京都では、東京都建築安全条例第6条、いわゆる「がけ条例」があります。
高さ2mを超えるがけの近くに建物を建築する場合には、原則として擁壁を設置するなど、安全上必要な対策が求められます。
八王子市も、この規定について「高さ2mを超えるがけ」に近接して建築する場合には、擁壁の設置その他の安全上適当な措置が必要になると案内しています。
具体的には、高さ2mを超えるがけの下端から、がけ高の2倍以内の水平距離に建物を建てる場合が一つの重要な判断基準になります。
例えば、がけ高が3mなら、
3m×2=6m
となり、がけ下端から水平距離6m以内に建物を計画する場合には、がけ条例への対応を検討する必要があります。
ただし、一定の安全性が確認できる場合や、建物の基礎・構造などによって安全性を確保できる場合には、必ずしも新しい擁壁を造らなければならないわけではありません。
そのため、
「2mを超えたら建築不可」
という理解も正確ではありません。
2.「土地の高低差2m」と「がけ高2m」は同じではない
ここは非常に重要です。
例えば、道路から敷地の一番高いところまで2.5mの高低差があったとしても、その数字だけで東京都建築安全条例上の「高さ2mを超えるがけ」と判断するわけではありません。
東京都建築安全条例には「がけ高」の考え方があり、斜面の勾配や形状などを含めて判断されます。
反対に、一見するとそれほど大きな高低差に見えなくても、30度を超える急な斜面や擁壁が存在している場合には、建築時に詳細な確認が必要になるケースがあります。
したがって売却前には、単純にメジャーで「だいたい2mくらい」と測るだけでは不十分です。
高低測量図や造成図面、現況測量図などから正確な高さ関係を確認することが重要です。
3.高さ2mを超える「既存擁壁」は特に確認が必要
高低差のある土地では、擁壁が設置されているケースが多くあります。
問題になるのは、擁壁が存在すること自体ではありません。
重要なのは、
「その擁壁が、どのような根拠で造られたものなのか」
という点です。
八王子市では、高さ2mを超える擁壁を新たに設置する場合、建築基準法に基づく工作物の確認申請を行い、工事完了後には検査を受ける必要があると案内しています。
また、既存擁壁についても、確認済証・検査済証や、宅地造成・開発許可等による検査済証の有無は非常に重要な資料になります。
古い住宅地では、
確認済証が残っていない
検査済証が見つからない
誰が施工した擁壁なのか分からない
造成当時の図面が残っていない
というケースも珍しくありません。
ただし、書類がないからといって直ちに「違法擁壁」と決めつけることもできません。
築造時期、当時の法令、造成経緯、構造、現在の状態などを総合的に確認する必要があります。
4.「古い擁壁だから危険」とも限らない
擁壁の安全性は、高さだけでは判断できません。
鉄筋コンクリート造なのか、練積み造なのか、間知石・間知ブロックなのか、その他の構造なのかによって確認するポイントが異なります。
また、
ひび割れ
はらみ出し
傾き
沈下
水抜き穴の状態
排水状況
擁壁上部の増し積み
二段擁壁
といった現況も重要です。
特に注意したいのが「増し積み擁壁」です。
もともとの擁壁の上にコンクリートブロック等を積み、その裏側に土を入れて敷地を高くしているケースがあります。
既存擁壁が、増加した土圧まで考慮して設計されていなければ、建築時に安全性の確認を求められる可能性があります。
また上下に擁壁が連続する「二段擁壁」についても、下段擁壁に上段擁壁や建物の荷重が影響していないかを確認する必要があります。
国土交通省も既存宅地擁壁について、現況や劣化状況を確認し、必要に応じて補修・補強・再構築等を検討するための健全度判定の考え方を公表しています。
5.さらに重要になった「盛土規制法」
近年、高低差のある土地では「宅地造成及び特定盛土等規制法」、いわゆる盛土規制法についても確認が必要です。
盛土規制法は、危険な盛土等による災害を防止するため、一定規模以上の盛土・切土などを規制する法律です。
八王子市では、2024年7月31日から市内全域が宅地造成等工事規制区域に指定されています。
例えば宅地造成等工事規制区域では、一定規模以上の盛土・切土について許可が必要になります。
代表的な基準としては、盛土で高さ1mを超えるがけを生じるもの、切土で高さ2mを超えるがけを生じるもの、盛土と切土によって高さ2mを超えるがけを生じるもの、一定規模を超える盛土などがあります。
つまり現在の八王子では、
「今ある高低差」
だけを見るのではなく、
今後、建替えや造成をするときにどのような工事が必要になるのか
まで確認する必要があります。
6.既に造成されている土地が、いきなり違法になるわけではない
ここも売主様が誤解しやすい部分です。
盛土規制法の規制区域に指定されたからといって、昔から存在している造成地や擁壁が、それだけで突然違法になるわけではありません。
しかし、危険な盛土等については土地所有者等に安全な状態を維持する責務があり、災害防止のため必要な場合には是正措置を求められる制度があります。
また、買主が建替えをするときに、
擁壁を造り直す必要がある
地盤補強が必要になる
建物位置をがけから離す必要がある
深基礎・杭基礎等が必要になる
造成許可が必要になる
といった問題が判明する可能性があります。
そのため「今の家に普通に住めているから問題ない」という判断だけでは不十分なのです。
7.高低差のある土地は、売却価格にも影響することがある
同じ100㎡の土地でも、平坦地と高低差のある土地では、買主が負担する可能性のある造成費用が異なります。
例えば、既存擁壁を撤去して新しい擁壁を造る必要がある場合、土地の規模や施工条件によっては大きな工事費になることがあります。
さらに、前面道路が狭く大型重機が入れない、隣地との距離が近い、既存建物を残したまま施工できない、といった条件によって費用はさらに変わります。
そのため買主側の住宅会社が、
「擁壁の安全性を確認してからでなければ建築計画を作れない」
と判断することもあります。
この状態で販売すると、買主は将来発生する工事費を安全側に大きく見積もる傾向があります。
その結果、本来必要な費用以上に土地価格が低く評価されてしまうことがあります。
だからこそ、高低差のある土地ほど、売却前に状況を整理しておく意味が大きいのです。
8.売却前に確認したい資料
高低差2mを超える可能性がある土地では、現地だけを見るのではなく、行政資料や過去の造成資料まで確認することが重要です。
特に確認したいのは、現況測量図や高低測量図、開発登録簿、開発許可・宅地造成許可関係資料、擁壁の工作物確認済証・検査済証、建物の建築確認概要書、造成時の図面などです。
さらに、擁壁が敷地境界のどちら側に存在しているのかも重要です。
自分の土地にある擁壁なのか。
隣地所有なのか。
境界線上にあるのか。
誰が維持管理するのか。
こうした点が不明確なまま売却すると、契約直前になって買主から質問され、取引が止まることがあります。
9.隣地のがけ・擁壁でも安心とは限らない
「擁壁は隣の土地にあるから、自分の土地には関係ない」
とは限りません。
例えば自分の土地が隣地のがけ下に位置していれば、将来建築する建物ががけ条例の影響を受ける可能性があります。
反対に、自分の土地ががけ上に位置している場合にも、建物荷重が既存擁壁へ影響するかどうかを検討する必要があります。
東京都建築安全条例では、がけ上・がけ下の双方について安全性の考え方が設けられています。
したがって、不動産調査では自分の敷地だけを見るのではなく、周囲の地形まで確認する必要があります。
10.2m以下なら何も確認しなくてよいわけではない
「2mを超えていなければ問題ありませんか?」
という質問も多くあります。
東京都建築安全条例第6条の「高さ2mを超えるがけ」に該当しなくても、それだけで安全性が保証されるわけではありません。
八王子市も、高さ2m以下の場合には同条例第6条による擁壁設置義務はないとしながらも、安全対策については設計者等が判断する必要があるとしています。
また、盛土規制法では、盛土によって高さ1mを超えるがけを生じるケースなど、2mより小さい段階から規制対象になるものもあります。
つまり、
「2m以下=何も確認不要」ではありません。
11.高低差のある土地ほど「売る前の調査」が重要
高低差や擁壁に問題がある可能性を感じると、
「売る前に擁壁を造り直した方がいいのでは?」
と考える方もいらっしゃいます。
しかし、必ずしも売主側で工事を行うことが最善とは限りません。
買主がどのような建物を建築するかによって、必要となる擁壁・基礎・造成方法が変わるからです。
数百万円以上かけて工事をしたものの、買主の建築計画では別の工事が必要だった、ということになれば効率的ではありません。
まず行うべきなのは、
現状を正確に把握することです。
行政資料を確認し、擁壁の状態を確認し、必要であれば建築士や造成設計者に相談し、その結果を踏まえて販売方法を考えます。
状況によっては現況のまま売却し、買主に調査結果を開示したうえで価格を設定する方が合理的なケースもあります。
まとめ|問題なのは「高低差があること」より「状況が分からないこと」
高低差2mを超える土地だからといって、売却できないわけではありません。
八王子市には、擁壁や高低差のある住宅地が数多く存在し、通常の不動産として売買されています。
ただし、
土地の高低差なのか
条例上の「がけ」なのか
擁壁の高さはいくつなのか
擁壁に検査済証があるのか
盛土・切土はどのように行われたのか
建替え時にどのような規制を受けるのか
という点を整理しておくことが重要です。
不動産売却では、問題があること以上に、
「何が問題なのか分からない状態」
が買主にとって大きな不安材料になります。
高低差や擁壁のある土地では、販売を始めてから問題を調べるのではなく、できる限り売却前に調査しておくことが、スムーズな取引と適正な価格評価につながります。
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【本ブログ監修者】

★柴田祐介(しばた ゆうすけ)1981年生まれ。
大手不動産会社にて八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
保有資格:宅地建物取引士、二級建築士、2級FP技能士、相続アドバイザー二級、秘書検定2級、既存住宅状況調査技術者