高い査定価格を出した不動産会社に任せれば高く売れる?
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不動産を売却するとき、複数の不動産会社へ査定を依頼すると、会社によって査定価格に差が出ることがあります。
例えば、
A社 4,200万円
B社 4,450万円
C社 4,800万円
という査定結果だった場合、
「4,800万円と査定したC社に任せれば、一番高く売ってくれるのでは?」
と思うのは自然なことです。
しかし、不動産売却では査定価格が一番高い会社=一番高く売れる会社とは限りません。
むしろ大切なのは、
「なぜ、その価格なのか」
という査定価格の根拠です。
不動産会社を選ぶ際には、査定書に書かれた数字だけではなく、その数字を導き出した考え方、販売戦略、物件調査の精度まで確認する必要があります。
そもそも「査定価格」とは何なのか?
不動産売却では、価格をいくつかに分けて考える必要があります。
不動産適正取引推進機構では、不動産売却に関する価格を「売却希望価格」「査定価格」「売出価格」「購入希望価格」「成約価格」などに区分して説明しています。つまり、査定価格と実際に売買契約を締結する価格は、そもそも同じものではありません。
査定価格とは、不動産会社が周辺の成約事例、現在販売中の競合物件、土地・建物の条件、市場動向などを調査したうえで、
「この不動産であれば、現在の市場ではこの程度の価格が妥当ではないか」
と提示する価格です。
査定を受けたからといって、その不動産会社がその金額で買い取ってくれるわけではありません。
また、その価格で購入する買主が既に存在するという意味でもありません。
つまり、査定価格は基本的に不動産会社による価格についての意見です。
不動産会社は査定価格の「根拠」を説明する必要がある
ここは非常に重要です。
宅地建物取引業法第34条の2第2項では、宅地建物取引業者が売買すべき価格や評価額について意見を述べる場合、その根拠を明らかにしなければならないとされています。
国土交通省も、価格査定マニュアルや同種の取引事例など、合理的な説明ができる根拠を用いる必要があると示しています。
したがって、
「うちなら4,800万円で売れます」
という言葉だけでは十分ではありません。
なぜ4,800万円なのか。
どの成約事例と比較したのか。
駅距離は同程度なのか。
土地面積は近いのか。
道路条件は同じなのか。
築年数や建物状態はどう違うのか。
そのような具体的な説明が重要になります。
「高い査定」と「高く売れる」は全く別の話
不動産売却で特に理解しておきたいのが、
査定価格を決めるのは不動産会社ですが、実際の購入価格を決めるのは市場にいる買主である
という点です。
例えば、市場から見て4,300万円前後が一つの目安となる住宅を、4,800万円で売り出したとします。
不動産会社が、
「4,800万円の査定です」
と言ったからといって、買主が4,800万円を支払うわけではありません。
買主側も周辺物件を比較しています。
現在販売中の物件だけでなく、立地、土地面積、築年数、間取り、道路状況、リフォーム費用などを比較したうえで購入判断をします。
つまり、
売主側だけが高いと思っていても、買主側がその価格に価値を感じなければ成約には至りません。
これが不動産価格の基本です。
なぜ不動産会社によって査定価格が違うのか?
査定価格に差が出ること自体は珍しいことではありません。
同じ不動産でも、比較する成約事例や補正方法、市況の判断、物件の評価方法などによって一定の差は生じます。
また、戸建住宅では土地だけでなく建物の評価も必要になるため、さらに差が生じることがあります。
一方で、注意したいのは、
査定価格そのものが、不動産会社を選んでもらうための材料になってしまう場合があることです。
売主様からすれば、
「4,300万円です」
と言われるより、
「4,800万円でいけます」
と言われた方が魅力的に感じるでしょう。
そのため、複数社による査定では、最も高い数字を提示した会社が選ばれやすくなる場合があります。
もちろん、高い査定価格を提示した会社すべてに問題があるわけではありません。
実際にその価格を裏付ける十分な根拠があれば、強気の査定が適切な場合もあります。
問題なのは、
根拠が乏しいにもかかわらず、査定価格だけが突出して高いケースです。
高すぎる価格で売り出すことにもリスクがある
「高く売り出して、売れなければ後から値下げすればいい」
という考え方もあります。
もちろん、不動産は売主様の財産ですから、最終的な売出価格を決めるのは売主様です。
しかし、販売価格を大きく上げれば上げるほど有利になるわけではありません。
不動産売却では、販売開始直後が非常に重要だからです。
新規物件として市場に公開されると、その地域で物件を探している購入希望者や不動産会社から比較的注目されやすくなります。
ところが、その段階で価格が周辺相場から大きく離れていると、
「条件は良いけれど価格が高い」
と判断され、候補から外されてしまう場合があります。
その後価格を下げても、既に一度見送った購入検討者が必ず戻ってくるとは限りません。
さらに販売期間が長くなれば、
「長く売れていない物件なのではないか」
という見方をされる可能性もあります。
したがって、売出価格は単純に高ければよいのではなく、
市場の反応を想定しながら戦略的に設定することが重要です。
「査定価格」と「売出価格」は同じでなくてもよい
ここも誤解されやすい部分です。
例えば、不動産会社の査定価格が4,300万円だったとしても、
「4,300万円で売り出さなければならない」
ということではありません。
売主様が、
「急いでいないので、少し高い価格から挑戦したい」
と考えるのであれば、4,480万円から販売を始めるという考え方もあります。
反対に、
「住み替え先が決まっていて、一定期間内に売却したい」
という場合には、より成約可能性を重視した価格設定が必要になることもあります。
国土交通省の案内でも、査定額や売却方法を比較したうえで不動産会社を選び、査定額を参考に売出価格を決める流れが示されています。
つまり重要なのは、
査定価格そのものではなく、その査定を基準としてどのような販売戦略を組み立てるか
なのです。
本当に確認したいのは「成約事例」
査定書を見る際、私が特に重要だと考えているのが成約事例です。
売出事例だけを見てはいけません。
例えば、近隣で4,980万円で販売されている住宅があったとしても、その住宅が4,980万円で売れるとは限りません。
4,980万円は、あくまでその所有者が市場に提示している価格です。
それに対し、
4,580万円で売り出した住宅が4,380万円で契約になったのであれば、
市場が実際に受け入れた価格は4,380万円です。
不動産価格を考える際には、
「いくらで売り出されているか」だけではなく、「実際にいくらで売れたのか」
を見ることが重要です。
東日本不動産流通機構も、不動産会社がレインズを利用して相場や取引事例を確認し、それらを基に査定する流れを案内しています。
八王子では「同じ町内」でも価格差が大きいことがある
八王子市で査定を行う際は、単純な坪単価比較だけでは判断しにくいケースが多くあります。
例えば同じ町内、同じ駅徒歩圏であっても、
・前面道路の幅員や方位
・高低差の有無
・擁壁の状態
・土地の間口や形状
・旗竿地か整形地か
・建築基準法上の道路種別
・セットバックの有無
・都市計画や地区計画
・用途地域
・建ぺい率、容積率
・建物の築年数や施工状態
・増築部分の有無
・境界や越境の状況
・給排水管の状況
などによって価格評価が変わります。
特に八王子は平坦な住宅地だけでなく、高低差のある造成地、擁壁のある住宅地、私道に面する土地、古くからの住宅地など、地域によって不動産の条件が大きく異なります。
例えば道路幅員や高低差、擁壁などは、一見すると似ている土地であっても建築計画や造成費用に影響することがあります。
そのため、
「近くの土地が坪100万円だから、この土地も坪100万円」
という単純な査定では十分とは言えません。
国土交通省の不動産情報ライブラリでも、不動産価格は面積や前面道路などの個別要因だけでなく、取引事情によっても異なると説明されています。
査定価格よりも「物件調査」が重要な場合もある
不動産売却では、価格査定だけを先に考えてしまいがちですが、私は物件調査と査定はセットで考えるべきものだと考えています。
例えば土地であれば、
道路は公道か私道か。
建築基準法上の道路なのか。
道路幅員は何mなのか。
セットバックは必要なのか。
境界標はあるのか。
越境はないのか。
給排水管はどこを通っているのか。
擁壁に問題はないのか。
このような条件によって、不動産の市場性が変わる可能性があります。
中古戸建であれば、
確認済証や検査済証の有無。
増築履歴。
雨漏りやシロアリ被害。
給排水設備。
リフォーム履歴。
既存不適格の可能性。
建物状況調査を行うかどうか。
なども検討する必要があります。
つまり本来の査定とは、
周辺の坪単価を掛けるだけの作業ではありません。
物件を調査し、その不動産特有の条件を理解したうえで市場性を判断する必要があります。
高い査定価格を出した会社を選んではいけないのか?
そういう意味ではありません。
高い査定価格でも、しっかりした根拠があれば問題ありません。
例えば、
「直近で条件の近い物件がこの価格で成約しています」
「現在このエリアでは競合物件が少ないため、少し強気でも反応が見込めます」
「土地形状や道路条件が周辺成約物件より良いため、この部分をプラス評価しています」
といった説明があり、その内容に合理性があれば、高い査定価格にも十分な意味があります。
大切なのは、
高いか安いかではなく、説明できる価格かどうかです。
3社の査定価格が違った場合はどう見る?
例えば、
A社 4,250万円
B社 4,350万円
C社 4,850万円
だったとします。
この場合、
「C社が一番高く売ってくれそう」
と判断する前に、
「なぜ他社より500万円前後高いのですか?」
と聞いてみることが重要です。
そして、次の点を確認します。
- どの成約事例を基準にしているか
- 売出事例ではなく成約事例を確認しているか
- 対象物件との条件差をどう補正したか
- その価格帯で購入する買主像を想定できているか
- 具体的にどのような販売方法を予定しているか
- どの程度の期間での成約を想定しているか
- 反響が少なかった場合、いつ価格戦略を見直すのか
- 土地・建物・道路・境界などの調査をどこまで行っているか
これらに具体的な説明があれば、査定価格の信頼性を判断しやすくなります。
反対に、
「とにかく高く売ります」
「うちなら大丈夫です」
という説明だけであれば、査定価格そのものを慎重に見る必要があります。
本当に比較すべきなのは「査定額」ではなく「売却戦略」
不動産会社を比較するとき、多くの方が最初に見るのは査定価格です。
しかし、本当に比較した方がよいのは、その後です。
どのような写真を掲載するのか。
どのような物件紹介文を作るのか。
その物件の長所をどう伝えるのか。
短所や注意点をどの段階で整理するのか。
購入検討者から質問があったとき、どこまで正確に回答できるのか。
他の不動産会社から問い合わせがあったとき、どのように対応するのか。
申込みが入ったとき、価格だけでなく住宅ローン、契約条件、引渡条件まで含めてどのように交渉するのか。
こうした一つ一つの積み重ねが、最終的な成約条件に影響します。
査定書を作ることは、売却業務の入口にすぎません。
「査定額1位」の会社ではなく「説明に納得できる会社」を選ぶ
不動産売却で最も避けたいのは、
高い査定価格を信じて販売を開始したものの反響が少なく、
4,800万円
↓
4,580万円
↓
4,380万円
↓
4,180万円
というように価格変更を繰り返し、結果として当初想定より長期間の売却活動になってしまうことです。
もちろん、価格変更そのものが悪いわけではありません。
市場の反応を確認しながら価格を調整することは、正常な販売戦略の一つです。
しかし、
最初の価格設定に十分な検討がなかったために値下げを繰り返す
ことと、
最初から戦略を持ったうえで市場反応に応じて価格を調整する
ことは意味が違います。
売主様にとって重要なのは「最初に提示された査定額」ではありません。
最終的に、
どの価格で、どの条件で、どの程度の期間をかけて売却できたか
です。
まとめ|査定価格は「会社選びの点数」ではありません
不動産会社から高い査定価格を提示されれば、期待したくなるのは当然です。
しかし、
査定価格が高いことと、実際に高く売れることは別問題です。
査定価格は、不動産会社が市場データや物件条件を基に提示する価格についての意見です。
その価格で実際に購入するかどうかを決めるのは買主です。
だからこそ、不動産会社を選ぶときには、
「一番高い査定価格を出した会社はどこか?」
ではなく、
「なぜこの価格なのかを最も具体的に説明できる会社はどこか?」
という視点が大切だと思います。
特に八王子市内の不動産は、駅距離だけではなく、道路、高低差、擁壁、土地形状、建築条件、境界、建物状態など、価格に影響する要素が数多くあります。
株式会社cocoro不動産では、単に高い査定価格を提示することよりも、対象不動産を確認し、周辺の成約事例や競合物件、土地・建物の条件を整理したうえで、
「なぜこの価格になるのか」
をできる限り分かりやすくお伝えすることを大切にしています。
査定価格だけではなく、
「この金額で売り出した場合、どのような販売戦略になるのか」
まで確認してから、不動産会社を選ぶことをおすすめします。
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【本ブログ監修者】

株式会社cocoro不動産 代表取締役
★柴田祐介(しばた ゆうすけ)1981年生まれ。
大手不動産会社にて八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
宅地建物取引士、二級建築士、2級FP技能士、相続アドバイザー二級、秘書検定2級、既存住宅状況調査技術者