道路台帳と現況幅員が違うのはなぜ?不動産売買での確認方法
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土地や中古住宅の売買では、前面道路の調査は非常に重要です。
ところが実際に調査をしてみると、
「道路台帳では4.0mなのに、現地で測ると3.7mしかない」
「役所では幅員5.0mと表示されているのに、アスファルト部分は4.5m程度しかない」
といったケースがあります。
このような場合、どちらかが間違っているとは限りません。
道路には、
- 道路法上の道路区域
- 道路台帳上の幅員
- 市道等の認定幅員
- 現地の道路形態としての幅員
- 建築基準法上の道路幅員
- 境界確定によって確認された幅員
など、目的の異なる複数の「幅員」が存在するからです。
不動産売買では、この違いを理解せず「前面道路4m」とだけ判断すると、セットバック、再建築、建ぺい率・容積率、境界、土地面積などに影響する可能性があります。
今回は、道路台帳と現況幅員が異なる理由と、不動産売買でどの資料まで確認すべきなのかを専門的に解説します。
そもそも「道路台帳」とは?
道路台帳は、道路管理者が管理する道路について作成する公的な台帳です。
道路法第28条では、道路管理者に道路台帳の調製・保管が義務付けられています。
国土交通省
道路台帳について
道路法第28条
e-Gov法令検索「道路法」
道路台帳には道路の位置、路線、延長、幅員、道路区域など、道路管理に必要な情報が記録されています。
ただし、重要なのは、
「道路台帳は土地の境界だけを証明するために作成された図面ではない」
という点です。
道路管理行政のために作成されている資料であり、道路台帳に描かれた線だけを見て民有地と道路との所有権境界を確定できるとは限りません。
「道路幅員」には複数の意味がある
道路調査で最も重要なのがここです。
単純に「道路幅員4m」といっても、その4mが何を意味しているのか確認しなければなりません。
代表的には次のような区分があります。
①認定幅員
市道などとして道路認定されている幅員です。
八王子市では「はちおうじマップ」の道路幅員マップで、
- 路線名
- 認定幅員
を確認できます。
一方、道路台帳平面図については別途「道路台帳マップ」が用意されています。
八王子市
道路台帳の閲覧
つまり、
道路幅員マップに表示された認定幅員=現地でメジャーを当てた道路幅員
とは限りません。
②道路区域幅員
道路管理者が道路として管理する区域です。
道路法上の「道路区域」の境界から反対側の道路区域境界までの幅員と考えると分かりやすいでしょう。
東京都の道路台帳作成要領でも、
「道路区域幅員」
と
「道路現況幅員」
は区別されています。
道路区域幅員については区域決定等の告示を基礎とし、道路現況幅員については道路構造の現況を測定する考え方が示されています。
東京都建設局
道路台帳作成要領
この違いが、台帳と現地が一致しない大きな原因の一つです。
③現況幅員
現地で実際に道路として存在している幅です。
ただし、「何と何の間を測るか」によって数字は変わります。
例えば、
- アスファルト端からアスファルト端
- 側溝外側から反対側側溝外側
- 縁石から縁石
- 道路境界から道路境界
では、同じ道路でも異なる数字になります。
したがって、
現地でアスファルト部分だけを測って道路幅員と判断することはできません。
側溝、路肩、歩道なども道路区域に含まれていることがあります。
なぜ道路台帳と現況幅員が違うのか?
主な原因を整理してみましょう。
理由① 測っている場所が違う
道路は必ずしも平行ではありません。
例えば一つの路線でも、
4.0m → 4.3m → 3.8m → 4.1m
と幅が変化していることがあります。
道路台帳に記載された幅員の測定地点と、対象不動産の正面で測った地点が異なれば、当然数字も違います。
特にカーブ、隅切り、交差点付近では注意が必要です。
理由② 側溝や路肩が道路区域に含まれている
非常によくあるケースです。
例えば現地では、
道路境界
|側溝30cm|アスファルト3.4m|側溝30cm|
道路境界
となっている場合、
アスファルトだけを見ると3.4mですが、道路区域としては4.0mということがあります。
見た目では、
「4mない」
ように見えても、道路境界間では4mある可能性があります。
逆に、舗装されているからといって、そのすべてが道路区域とは限りません。
理由③ 塀や擁壁が道路区域へ入り込んでいる
道路区域が4m確保されているにもかかわらず、
- 古いブロック塀
- 擁壁
- 門柱
- 石積み
- 植栽
などが道路区域側へ越境しているケースがあります。
その場合、
台帳上4.0m
でも、
物理的に通行できる幅は3.7m
ということが起こります。
ここでは、
道路区域の幅
と
有効に通行できる幅
を分けて考える必要があります。
理由④ 道路境界そのものが確定していない
さらに重要なのが境界です。
道路台帳に道路線が表示されていても、対象地と道路との所有権境界が正式に確定しているとは限りません。
八王子市では、市が管理する道路や水路と隣接土地所有者との境界について、関係者が立会い・協議し、合意した結果を「土地境界図」として作成しています。
八王子市
境界確定事務のご案内
したがって、不動産売買では道路台帳だけでなく、
土地境界図が存在するか
まで確認することが重要です。
理由⑤ 昔の道路形態と現在の道路形態が違う
道路は長い年月の間に変化します。
例えば、
- 道路改良
- 側溝整備
- 舗装工事
- 歩道整備
- 宅地造成
- セットバック
- 道路拡幅
- 境界確定
などです。
一方で、行政資料の作成時期や資料の目的によっては、現在の見た目と完全には一致しない場合があります。
そのため、道路調査では必ず、
「資料」
と
「現地」
を照合します。
理由⑥ そもそも「建築基準法上の道路幅員」を調べていない
不動産売買ではここが非常に重要です。
道路法上の道路と、建築基準法上の道路は同じ概念ではありません。
建築基準法第42条では、建築基準法上の「道路」が定義されています。
代表的なものとして、
- 第42条1項1号道路
- 第42条1項2号道路
- 第42条1項3号道路
- 第42条1項5号道路(位置指定道路)
- 第42条2項道路
などがあります。
八王子市でも、道路種別については道路管理課ではなく、建築指導課で確認する仕組みになっています。
つまり、
市道であることを確認しただけでは、建築基準法上の道路調査は終わっていません。
特に注意したい「42条2項道路」
道路台帳と現況幅員の違いが特に問題になりやすいのが、建築基準法第42条第2項道路、いわゆる「2項道路」です。
2項道路は、原則として幅員4m未満でも一定の要件を満たす既存道路について、建築基準法上の道路として扱う制度です。
この場合、原則として道路中心線から2m後退した位置が道路境界線とみなされます。
したがって、
現況道路幅員3.6m
だから、
両側20cmずつ後退すればよい、
と単純計算することは危険です。
道路中心線そのものをどこに設定するのか確認しなければならないからです。
対側が、
- 河川
- 水路
- がけ
- 線路敷
などの場合には、通常とは異なる扱いになる可能性もあります。
八王子市の2項道路調査はかなり慎重
八王子市の運用を見ると、2項道路の後退線について相談する際、
- 現況測量図
- 現況測量図と土地境界図等の重ね図
- 公図
- 地積測量図
- 土地境界図
- 道路台帳
- 過去の確認申請書
- 建築計画概要書
などの資料を準備するよう案内されています。
さらに八王子市の調査書では、
「認定幅員」
と
「実測幅員」
を別々に記載する様式になっています。
つまり行政実務上も、
認定幅員と実測幅員は別の数字になり得ることを前提としている
わけです。
ここは不動産売買でも非常に重要なポイントです。
不動産売買では何を確認すればいい?
実務では次の順番で確認すると整理しやすくなります。
STEP1 道路管理者を確認する
まず、
- 国道
- 都道
- 市道
- 私道
- 法定外公共物
のどれなのかを確認します。
市道だから市役所、都道だから東京都というように、道路管理者によって調査先が変わります。
STEP2 道路台帳を確認する
道路台帳では、
- 路線名
- 路線番号
- 認定状況
- 幅員
- 道路区域
などを確認します。
八王子市の場合、「はちおうじマップ」でも確認できますが、売買案件では必要に応じて窓口資料まで確認します。
STEP3 土地境界図を確認する
道路との境界が確定している場合には土地境界図を確認します。
重要なのは、
道路台帳の線と土地境界線を同じものとして扱わない
ことです。
土地境界図が存在すれば、
対象地側道路境界
↓
反対側道路境界
を確認できる可能性が高くなります。
境界未確定の場合には、その事実自体が重要な調査結果となります。
STEP4 現地を確認する
次に現地です。
確認するのは単なる道路幅員だけではありません。
- 側溝
- 縁石
- アスファルト端
- ブロック塀
- 擁壁
- 電柱
- ガードレール
- 道路境界標
- セットバック部分
- 対側道路境界の状況
まで確認します。
台帳図を現地へ持参して確認すると、資料と現況の違いが非常に分かりやすくなります。
STEP5 現況幅員を実測する
簡易的な調査であればメジャーやレーザー距離計などで確認できます。
ただし、不動産業者による簡易測定はあくまで参考値です。
境界が確定していなければ、
「どこからどこまでが正式な道路幅員なのか」
自体が確定できない場合があります。
売買条件や建築計画に大きな影響を与える場合には、土地家屋調査士等による測量を検討すべきでしょう。
STEP6 建築基準法上の道路種別を確認する
道路管理課の調査とは別に、
建築指導課等で、
「建築基準法第42条何項何号の道路なのか」
を確認します。
ここで初めて、
- 再建築できるのか
- セットバックが必要なのか
- 道路中心線をどう考えるのか
という建築上の検討ができます。
STEP7 数字が違えば役所へ確認する
例えば、
道路台帳:4.00m
現地簡易測定:3.65m
だったとします。
この場合、
「台帳と現況が違います」
で終わらせてはいけません。
確認すべきなのは、
- 台帳の4.00mは何の幅員なのか
- 道路境界は確定しているか
- 土地境界図は存在するか
- 道路区域はどこまでか
- 現地の塀等に越境がないか
- 建築基準法上の道路幅員はどう扱われるか
です。
この確認によって原因を特定していきます。
道路幅員の違いが売買価格に影響することもある
道路幅員の問題は単なる役所調査ではありません。
土地の利用価値そのものに影響する可能性があります。
例えば2項道路でセットバックが必要になれば、その部分には原則として建物や塀等を建築できません。
そのため、
登記簿面積100㎡
でも、
実際に建築敷地として利用できる面積がそれより小さくなる可能性があります。
また道路条件によっては、
- 建築可能な建物規模
- 駐車場計画
- 建物配置
- 建築確認
- 金融機関の担保評価
などへ影響する場合もあります。
したがって、
道路幅員は土地価格を決める重要な要素の一つ
です。
「道路台帳4mだから大丈夫」は危険
不動産売買の道路調査で避けたいのが、
「市役所のマップに4mと書いてあるので問題ありません」
という判断です。
本当に確認すべきなのは、
その4mが何を意味しているのか
です。
認定幅員なのか。
道路区域幅員なのか。
現況幅員なのか。
建築基準法上の幅員なのか。
さらに、
道路境界は確定しているのか。
2項道路なら道路中心線はどこなのか。
ここまで確認して初めて、その土地の道路条件を正確に把握できます。
売主側でも道路調査は重要
道路調査というと買主側の問題と思われがちですが、売主側にとっても非常に重要です。
売却活動を開始してから、
「実はセットバックが必要だった」
「道路境界が未確定だった」
「台帳と現地幅員が違った」
ということが判明すると、買主との価格交渉や契約条件に影響することがあります。
そのため道路条件に不明点がある土地では、売却前にある程度調査しておくことをおすすめします。
よくある質問
Q.道路台帳で4mあればセットバックは不要ですか?
必ずしもそうとは限りません。
道路台帳上の幅員だけではなく、建築基準法上の道路種別・道路幅員・道路中心線等を確認する必要があります。
特に42条2項道路の場合には、建築指導課等への確認が重要です。
Q.現地で4mあれば問題ありませんか?
これも一概には言えません。
現地で4mに見えても、その一部が民有地である可能性があります。
逆に、見た目が4m未満でも側溝などを含めると道路区域として4m以上あるケースがあります。
Q.道路台帳と測量図ではどちらが正しいですか?
目的が異なるため、単純にどちらかが正しいとは言えません。
道路管理については道路台帳、土地境界については境界確定資料や測量図、建築については建築基準法上の道路資料を確認する必要があります。
複数の資料を重ねて判断することが重要です。
Q.道路境界が未確定でも売却できますか?
売却自体は可能です。
ただし、境界未確定であることによって道路幅員や有効宅地面積などが確定できない場合があります。
買主の建築計画に影響する可能性があれば、契約前に状況を十分説明する必要があります。
Q.道路幅員は不動産会社だけで調査できますか?
一般的な道路調査は不動産会社でも可能です。
ただし、境界位置や正確な道路幅員を測量によって確定する必要がある場合には、土地家屋調査士等への相談が必要になることがあります。
まとめ
道路台帳と現況幅員が違うこと自体は、決して珍しいことではありません。
問題なのは、
「数字が違う理由を確認しないまま売買を進めること」
です。
道路には、
認定幅員
道路区域幅員
現況幅員
土地境界
建築基準法上の道路幅員
という、それぞれ目的の異なる概念があります。
そのため不動産売買では、
道路台帳を見る
↓
土地境界図を確認する
↓
現地を確認する
↓
必要なら実測する
↓
建築基準法上の道路種別を確認する
↓
資料と現況に相違があれば行政へ確認する
という複数段階の調査が必要です。
特に古くからの住宅地では、道路台帳・公図・土地境界・現況道路がきれいに一致していないケースもあります。
道路幅員は、再建築の可否やセットバック、土地の有効面積、建物計画、最終的には不動産の価値にも関係する重要な調査項目です。
不動産を売却するときは、「道路幅員○m」という数字だけを見るのではなく、
その数字が何を根拠に、どこからどこまでを測った幅員なのか
まで確認することが重要です。
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【本ブログ監修者】

株式会社cocoro不動産 代表取締役
柴田祐介(しばた ゆうすけ)1981年生まれ。
大手不動産会社にて、八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
【保有資格】宅地建物取引士/二級建築士/2級FP技能士/秘書検定2級/既存住宅状況調査技術者/相続アドバイザー2級