親から相続した八王子郊外の土地|道路・農地・境界をどう調べる?
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親から八王子市郊外の土地を相続したものの、
「そもそも家を建てられる土地なのか分からない」
「登記では畑になっているが、売却できるのか」
「道路との境界がどこなのか分からない」
「昔からある土地なので測量図が見当たらない」
といったご相談は珍しくありません。
特に八王子市の郊外では、市街化区域だけではなく市街化調整区域、農地、山林、古くからの集落、幅員の狭い道路、水路などが存在するため、一般的な住宅地以上に慎重な調査が必要です。
結論からいうと、相続した土地については、単に登記事項証明書を取得するだけでは十分ではありません。
「道路」「都市計画・農地」「境界」の3方向から調査し、最後に現地の状態と照合することが重要です。
今回は、八王子市で相続した郊外土地を調査する際の実務的なポイントを詳しく解説します。
まず確認したいのは「相続登記」が終わっているか
土地の利用条件を調べる前に確認しておきたいのが、所有者の名義です。
2024年4月1日から相続登記は義務化されています。
原則として、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
また、2024年4月1日より前に発生した相続であっても、未登記の場合には制度の対象となります。
売却する場合には、原則として亡くなった親名義のまま買主へ直接所有権移転登記をすることはできません。
したがって、
相続関係の整理→相続登記→売却
という流れになります。
なお、土地が「農地」である場合にはもう一つ注意があります。
農地を相続した場合は、農地法第3条の3に基づき、土地所在地の農業委員会への届出も必要です。
農林水産省では、おおむね相続発生から10か月以内の届出を案内しています。
相続登記と農業委員会への届出は別の手続ですので注意しましょう。
①最初に「道路」を調べる
相続した土地について私が特に重要だと考えているのが道路調査です。
不動産では、
土地が道路に接している=建物を建築できる
とは限りません。
道路については少なくとも、
- 道路法上どのような道路なのか
- 建築基準法上の道路なのか
- 現況の幅員と接道長さはどうなっているか
- 道路部分の所有者は誰なのか
- 私道の場合、通行・掘削に問題がないか
まで確認する必要があります。
「市道」と「建築基準法上の道路」は別の話
よくある誤解が、
「市が管理している道路だから建築できる」
というものです。
しかし、道路法上の道路と建築基準法上の道路は、確認する制度が異なります。
八王子市では「道路台帳マップ」「道路幅員マップ」により、市道の路線名や認定幅員などを確認できます。
一方、建物を建築できるかを判断するうえで重要なのが、建築基準法第42条の道路種別です。
八王子市では指定道路図や指定道路マップによって道路種別を確認できますが、市も最新情報については窓口確認を求めています。
つまり、
道路台帳だけ見て道路調査を終了してはいけない
ということです。
八王子郊外で注意したい「2項道路」
昔から住宅が建っている地域では、道路幅員が4m未満というケースがあります。
その場合でも、建築基準法第42条第2項の道路、いわゆる「2項道路」として指定されていれば建築できる可能性があります。
ただし、原則として道路中心線から2mの位置まで敷地を後退させるセットバックが必要です。
例えば、
現況道路幅員3m
↓
道路中心から現在の敷地境界まで1.5m
↓
原則としてさらに0.5m後退
という考え方になります。
ただし、反対側が崖・川・水路などの場合には道路中心からの単純な振り分けにならないケースがあります。
したがって、
「道路幅員が約3mだから50cmセットバック」
と現地だけを見て判断するのは危険です。
道路種別、道路中心線、既存の後退線などを確認する必要があります。
建築基準法上の道路ではない「通路」の可能性もある
八王子郊外では、一見すると道路のように見える通路でも、建築基準法第42条道路に該当しないケースがあります。
この場合には、建築基準法第43条に基づく認定・許可などを検討することがあります。
国土交通省も、建築物の敷地について原則として幅員4m以上の道路に2m以上接する接道義務を示しています。
したがって相続土地では、
「道路があるか」ではなく「建築基準法上どの道路に、何m接しているか」
まで調べることが重要です。
②次に「市街化区域・市街化調整区域」を調べる
八王子市郊外の土地では、道路と同じくらい重要なのが都市計画上の区域です。
まず確認したいのが、
市街化区域なのか、市街化調整区域なのか
という点です。
八王子市では「はちおうじマップ」や都市計画図で確認できます。
ただし、市の都市計画図自体も、位置や境界を証明するものではなく参考情報とされています。
したがって区域境付近の土地などについては、最終的には市役所で確認した方が安全です。
市街化調整区域だから絶対に建築できない、ではない
市街化調整区域は、市街化を抑制することを基本とする区域です。
そのため、市街化区域と同じ感覚で、
「土地を買えば普通に住宅を建てられる」
とは考えられません。
一方で、
「市街化調整区域=絶対に建築できない」
とも限りません。
土地の成立経緯、既存建築物、都市計画法上の許可、条例上の基準などによって判断が変わります。
八王子市も、市街化調整区域では原則として許可なく建築・改築・用途変更はできない一方、一定条件を満たして都市計画法第43条の建築許可を得られるケースがあると案内しています。
ここで特に注意したいのが、
「昔から家が建っているから建替えできるだろう」
という判断です。
既存建物がある土地でも、その建築許可に所有者などの条件、いわゆる「属人性」が付いている場合があります。
親が建築できたからといって、相続人や第三者である買主も同じ条件で再建築できるとは限りません。
これは市街化調整区域の売買では非常に重要な調査事項です。
③登記地目が「畑」「田」なら農地法を調べる
相続した土地の登記事項証明書を取得すると、
地目:畑
地目:田
となっているケースがあります。
この場合、農地法上の確認が必要になります。
ただし実務上は、
登記上の地目だけで農地かどうかを判断しない
ことも重要です。
農地法では、土地の現況も重要になります。
逆に登記地目が「宅地」や「雑種地」であっても、長期間農地として利用されている土地について別途確認が必要になることがあります。
市街化区域の農地と市街化調整区域の農地では手続が違う
八王子市では、市街化区域内の農地を転用する場合、農業委員会への届出が必要です。
例えば、
畑→住宅敷地
畑→駐車場
などです。
一方、市街化調整区域内の農地については、東京都知事の農地転用許可が必要となります。
八王子市農業委員会もこの点を明示しています。
さらに、市街化調整区域で農地を宅地にする場合、
農地法だけクリアすればよいわけではありません。
都市計画法上の開発・建築許可も別に検討する必要があります。
八王子市では、宅地以外の土地を宅地にする「質の変更」について、市街化区域では500㎡以上、市街化調整区域では面積要件なしで開発許可制度の対象となることがあります。
したがって、
農地転用できるか
と
住宅を建築できるか
は別々に調査する必要があります。
④「生産緑地」かどうかも確認する
八王子市内には現在も多くの生産緑地があります。
生産緑地とは、市街化区域内にある農地のうち、都市計画上保全する農地として指定されたものです。
指定されている場合、農地として適正に管理する義務があり、建築や宅地造成などについて制限があります。
一方で、固定資産税・都市計画税や相続税について税制上の優遇があります。
相続した土地が生産緑地だった場合、
「相続したので自由に売却・宅地化できる」
わけではありません。
主たる農業従事者の死亡など一定条件を満たした場合には、市への買取申出制度を利用できる可能性があります。
また、特定生産緑地に指定されているかどうかも重要です。
生産緑地については、
農地法+都市計画法+税務
をセットで考える必要があります。
⑤さらに「農振農用地」でないか調べる
八王子市郊外の農地では、さらに専門的な確認として、
農業振興地域・農用地区域
があります。
いわゆる「農振」「農振農用地」です。
農用地区域は、将来にわたり農業上の利用を確保すべき土地として位置付けられているため、宅地などへの転用について強い制約があります。
八王子市では、市街化調整区域内に農業振興地域が指定され、その一部が農用地区域となっています。
したがって、
市街化調整区域
+農地
+農振農用地
という土地については、通常の住宅地とは全く異なる調査が必要です。
単純に「坪単価×面積」で査定する土地ではありません。
⑥境界は「公図を見るだけ」では分からない
相続土地で次に問題になるのが境界です。
まず法務局で確認したい資料として、
登記事項証明書
公図
地積測量図
旧土地台帳など
があります。
公図や地積測量図はオンライン請求できるものもあります。
ただし、公図が存在するからといって、現地境界を正確に復元できるとは限りません。
法務省も、地図に準ずる図面、いわゆる公図について、明治期の地租改正時に作成されたものが多く、現地を復元できるほどの精度を持たないものがあると説明しています。
特に古くから存在する郊外土地では、
公図上の形
登記面積
現地の塀・畑・道路
実際の測量結果
が一致しないことがあります。
⑦「筆界」と「所有権界」は厳密には違う
境界を調査する際に知っておきたい専門用語が、
筆界(ひっかい)
です。
筆界とは、土地が登記された際に一筆の土地を区画するものとして定められた公法上の境界です。
一方、所有権がどこまで及ぶかを示す線を「所有権界」といいます。
通常は両者が一致していますが、必ず一致するとは限りません。
例えば過去に隣地との間で土地の一部を交換したものの分筆登記をしていない場合などには、筆界と所有権界が異なる可能性があります。
法務省
筆界特定制度について
したがって、
「昔からこの塀が境界だから」
という話だけで土地の境界を確定することはできません。
⑧道路との境界「官民境界」も確認する
土地の前面が八王子市道の場合には、隣地だけではなく道路との境界も重要です。
道路と民有地との境界は一般に「官民境界」と呼ばれます。
八王子市では、市が管理する道路・水路等について土地境界図を保管しており、はちおうじマップから境界確定の有無や図面番号を確認できます。
相続した土地について昔の境界標が見つからない場合でも、過去に官民境界確定が行われていれば、その資料が測量の重要な手掛かりになることがあります。
⑨水路がある土地はさらに注意
八王子郊外では、土地と道路の間や敷地脇に水路が存在するケースがあります。
公図を見ると、
道路
↓
水路
↓
宅地
という形になっていることもあります。
現地では水路に蓋が掛けられていて普通の通路に見えることもありますが、法務上・行政上は別の土地ということがあります。
この場合、
道路への接道
水路占用
橋や蓋掛けの許可
官民境界
などを確認する必要があります。
そのため郊外土地では、航空写真や住宅地図だけではなく、必ず公図と現地を重ねて確認することが重要です。
⑩土地面積も登記簿をそのまま信用しない
例えば登記事項証明書に、
「500㎡」
と記載されていても、実測すると必ず500㎡になるとは限りません。
特に古い土地では、測量技術や登記制度の違いから、
登記面積500㎡
実測面積540㎡
あるいは、
登記面積500㎡
実測面積465㎡
といった差が生じることがあります。
この差を「縄伸び」「縄縮み」と呼ぶこともあります。
売却価格を坪単価だけで計算する場合には、この面積差が大きな金額差につながる可能性があります。
⑪確定測量が必要か判断する
境界が不明確な土地を売却する場合、土地家屋調査士へ依頼し、確定測量を行うことがあります。
確定測量では、単に土地を測るだけではありません。
法務局資料、過去の測量図、現地境界標などを調査し、隣接土地所有者や道路管理者等と境界を確認していきます。
分筆や地積更正を行う場合には筆界を明らかにすることが重要であると法務省も説明しています。
ただし、すべての売却で必ず確定測量が必要というわけではありません。
土地の性質、売却条件、既存測量図の精度、境界標の状況、買主の利用目的などから判断します。
相続した八王子郊外土地は「調査する順番」が重要
私が実務で土地を調査する場合、概ね次の流れで確認します。
①登記事項証明書・公図・地積測量図等を取得
②現地確認
③都市計画・市街化区域/調整区域確認
④道路法上の道路調査
⑤建築基準法上の道路種別調査
⑥接道幅・道路幅員・セットバック調査
⑦農地・生産緑地・農振等の確認
⑧開発・建築許可履歴等の調査
⑨道路・水路との官民境界確認
⑩民有地境界と測量資料の確認
この順番で調べる理由があります。
例えば最初に土地の査定価格を計算してしまい、後から、
「市街化調整区域で買主が住宅を建築できなかった」
「農地転用が難しかった」
「建築基準法上の道路に接していなかった」
「境界が未確定だった」
ということが判明すると、最初の査定そのものを大きく見直すことになるからです。
八王子郊外の土地は「広い=高い」とは限らない
相続した土地について、
「300坪もあるから相当高く売れるのでは?」
と思われる方もいます。
しかし土地価格は面積だけでは決まりません。
特に郊外では、
建築可能性
接道条件
道路幅員
市街化調整区域
農地法
造成の必要性
上下水道
境界
高低差
擁壁
などによって利用価値が大きく変わります。
500坪の土地より50坪の住宅地の方が、坪単価も総額も高くなるケースさえあります。
だからこそ相続土地では、最初に「いくらで売れるか」を考えるより、
「この土地で何ができるのか」
を調査することが重要なのです。
Q&A|相続した八王子の土地についてよくある質問
Q.登記が「畑」でも売却できますか?
売却できる可能性はあります。
ただし、農地として売るのか、宅地等へ転用して売るのかによって農地法上の手続が異なります。
市街化区域か市街化調整区域か、生産緑地や農振農用地に該当するかなどを確認する必要があります。
Q.相続した土地に道路があれば家は建てられますか?
道路があるだけでは判断できません。
建築基準法第42条の道路なのか、接道長さが確保されているか、セットバックが必要かなどを確認します。
Q.親が住んでいた家があるので建替えもできますか?
必ずしもそうとは限りません。
特に市街化調整区域では、既存建物の建築経緯や許可条件によって再建築の可否が変わる場合があります。
Q.境界杭がありません。売却できますか?
境界杭がなくても売却そのものが直ちに不可能になるわけではありません。
ただし、土地売買では境界が重要になるため、既存測量資料や官民境界資料を確認し、必要に応じて土地家屋調査士による測量を検討します。
Q.まず市役所へ行けば全部分かりますか?
一つの窓口ですべて完結するものではありません。
八王子市でも、建築指導課、道路管理課、開発指導課、都市政策課、農業委員会など確認先が分かれます。
さらに法務局資料、現地調査、測量調査を組み合わせて判断します。
まとめ|相続土地は「売却査定」の前に土地の正体を調べる
親から土地を相続すると、多くの方が最初に、
「いくらで売れるだろう」
と考えます。
もちろん価格も重要ですが、八王子郊外の土地では、その前に確認すべきことがあります。
道路は何道路なのか。
住宅を建築できるのか。
農地転用できるのか。
市街化調整区域ではないか。
生産緑地・農振農用地ではないか。
境界は確定しているのか。
こうした条件を一つずつ整理して初めて、その土地を誰が、どのような目的で購入できるのかが見えてきます。
土地は、登記簿に書いてある「面積」と「地目」だけでは判断できません。
特に古くから所有されてきた八王子郊外の土地では、法務局資料・市役所調査・現地調査の3つを照合することが重要です。
相続した土地について、「何から調べればよいか分からない」という段階でも問題ありません。
道路・農地・境界などを整理したうえで売却方法を検討することが、将来的なトラブルを防ぎ、土地の適正な評価にもつながります。
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【本ブログ監修者】

株式会社cocoro不動産 代表取締役
★柴田祐介(しばた ゆうすけ)
【保有資格】
宅地建物取引士/二級建築士/2級FP技能士/相続アドバイザー二級/秘書検定2級/既存住宅状況調査技術者