空き家にハチの巣ができた場合、所有者の責任は?
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空き家を所有していると、建物の老朽化や庭木の繁茂だけでなく、「ハチの巣」が問題になることがあります。
特に春から秋にかけては、軒下、雨戸の戸袋、屋根裏、外壁の隙間、庭木などにアシナガバチやスズメバチが巣を作ることがあります。
では、空き家にハチの巣ができ、そのハチが近隣住民や通行人を刺した場合、空き家の所有者は責任を負うのでしょうか。
結論からいうと、
「空き家にハチの巣ができた」という事実だけで、直ちに所有者に損害賠償責任が発生するとは限りません。
しかし、所有者がハチの巣の存在や危険性を知りながら長期間放置していた場合など、管理状況によっては民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。
また、空家法上も所有者には空き家を適切に管理することが求められており、ハチや害虫の発生は「単なる自然現象」として放置してよい問題ではありません。
■空き家の管理は原則として所有者の責任
空き家は、人が住んでいないからといって「管理しなくてもよい不動産」になるわけではありません。
国土交通省は、空き家を放置した場合の問題として、
・建物の倒壊
・屋根材や外壁材の飛散
・樹木の越境
・悪臭
・ネズミや害虫の発生
・不法侵入
・ごみの散乱
などを挙げています。
さらに、空家等に関する国の管理指針でも、衛生上の問題を防ぐために「害虫等の発生」を点検し、必要に応じて清掃や駆除などを行うことが示されています。
つまり、ハチの巣についても、空き家管理の一環として考えておく必要があります。
■八王子市では「空き家のハチの巣は所有者等が駆除」と明記
八王子市では、空き家に関する相談の中で、草木の越境に続いて「ハチの巣」などの問題が実際に発生していることが示されています。
さらに八王子市公式ホームページでは、
空き家の敷地にあるハチの巣については、所有者等が駆除する必要がある
と明確に案内されています。
また、八王子市では原則として私有地内のハチの巣を市が駆除するわけではなく、自分での駆除が難しい場合には協定事業者などを案内しています。
したがって、
「空き家だから市役所が対応してくれる」
「近所の人が困っているなら近所の人が駆除すればよい」
というものではありません。
原則として、まず所有者側で対応を検討する問題になります。
■ハチに刺されたら、必ず所有者が賠償するのか?
ここは非常に重要です。
例えば、
「空き家の庭にハチの巣があった」
「そこから飛んできたと思われるハチに隣人が刺された」
というだけで、必ず所有者が損害賠償責任を負うとは限りません。
民法709条では、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害し、損害を与えた場合には、損害賠償責任が生じるという考え方が定められています。
そのため実際には、
「所有者に管理上の過失があったのか」
が重要になります。
■責任を判断するときに重要になる「予見可能性」
ハチの巣の問題では、特に重要なのが、
所有者が危険を予測できたか
という点です。
例えば、
空き家を定期的に確認しており、前回の確認時には巣がなかったところ、突然ハチが巣を作り、その直後に事故が発生した場合。
このようなケースと、
近隣住民から、
「大きなスズメバチの巣があります」
「通学路の近くをハチが飛び回っています」
「危険なので対応してください」
と何度も連絡を受けていたにもかかわらず、何か月も放置していたケース。
この2つでは、所有者の管理責任についての評価が大きく異なる可能性があります。
特に、
危険を知っていたのに何もしなかった
という事情は、所有者の過失を判断する際に非常に重要な要素になります。
■「知らなかった」と言えば責任を免れるのか?
これも単純ではありません。
所有者本人が実際には知らなかったとしても、
「通常必要と考えられる管理をしていれば発見できたのではないか」
という点が問題になることがあります。
例えば、何年間も現地を一度も確認していない空き家で、庭木が著しく繁茂し、屋根や軒下にも容易に確認できるほど大きなハチの巣ができていた場合。
単に、
「遠方に住んでいたので知りませんでした」
だけで当然に責任を免れるとは限りません。
空き家所有者に重要なのは、
「知らなかったか」だけでなく、「適切な管理をしていたか」
という視点です。
■民法717条の「工作物責任」とハチの巣
不動産所有者の責任というと、民法717条の「土地の工作物責任」がよく問題になります。
民法717条では、建物や塀など土地の工作物の設置・保存に瑕疵があり、そのために他人へ損害を与えた場合、一定の要件のもとで占有者や所有者が責任を負う制度があります。
ただし、
「建物にハチの巣がある=直ちに民法717条の工作物責任」
と考えるのは少し乱暴です。
ハチは自然に飛来する生物であり、ハチの巣そのものが建物の「設置または保存の瑕疵」に当然該当するわけではありません。
したがって、ハチによる事故については、まず所有者の管理状況や過失を踏まえた民法709条の不法行為責任が問題になるケースが考えられます。
一方、
外壁が大きく破損している、軒裏が崩れているなど、建物自体が通常備えるべき安全性を欠いており、その状態と事故との間に因果関係が認められるような特殊な事案では、工作物責任が問題になる可能性もあります。
最終的には個別事情による判断になります。
■責任が重くなりやすいケース
空き家のハチの巣について、所有者側の責任が問題になりやすいのは、例えば次のような場合です。
・所有者がハチの巣の存在を把握していた
・近隣住民から駆除を求められていた
・市役所などから連絡や指導を受けていた
・通学路や歩道に近い場所に巣があった
・スズメバチなど危険性の高いハチが多数飛んでいた
・長期間まったく空き家を管理していなかった
・同じ場所に毎年のようにハチが営巣していた
・容易に確認できる大きさの巣を長期間放置していた
つまり、
「事故が起きる可能性を具体的に把握できる状態だったか」
が非常に重要になります。
■被害が発生した場合、どのような損害が問題になる?
仮に所有者に法的責任が認められれば、
・治療費
・通院交通費
・休業損害
・慰謝料
・後遺障害が生じた場合の損害
などが問題になる可能性があります。
特にスズメバチなどに刺された場合には、アナフィラキシーショックを起こすこともあり、被害が重大になる可能性があります。
したがって、「ハチの巣くらいなら放置しても大丈夫」と考えるのは危険です。
■空家法上の問題にもつながる可能性
2023年の空家法改正により、「特定空家」になる前の段階についても、市区町村が「管理不全空家」として所有者に指導・勧告できる制度が設けられています。
管理不全空家や特定空家として勧告を受けると、土地について住宅用地に対する固定資産税等の軽減措置を受けられなくなる可能性もあります。
もちろん、
ハチの巣が1個できただけで直ちに「管理不全空家」に指定される
という意味ではありません。
建物の状態、草木の繁茂、ごみ、害虫・害獣、周辺環境への影響などを含め、総合的に判断されます。
ただし、ハチの巣は「空き家が適正に管理されていないことを示す一つのサイン」になることはあります。
■相続した実家で特に注意したい
実務上、ハチの巣問題が起きやすいのが「相続した実家」です。
例えば、
親が亡くなったあと誰も住んでいない。
兄弟全員が遠方に住んでいる。
売却するかどうかも決まっていない。
その結果、
半年、1年、2年と誰も現地を確認しなくなってしまうケースです。
空き家は人の出入りがなくなるため、ハチにとって営巣しやすい環境になることがあります。
また、
雨戸を閉めっぱなしにしている住宅
軒裏に隙間がある住宅
庭木が繁茂している住宅
物置がある住宅
などは、外からでは巣を発見しづらい場合もあります。
相続した不動産については、
「売る・貸す・残す」の判断とは別に、所有している間の管理は必要
ということを覚えておく必要があります。
■空き家を売却するとき、ハチの巣はどうする?
売却予定の空き家でハチの巣が発見された場合には、基本的には売却前に対応しておくことをおすすめします。
特に内覧時に、
軒下に大きな巣がある
庭にハチが多数飛んでいる
玄関付近に営巣している
という状況では、購入希望者が敷地内に入ること自体が危険です。
また、屋根裏や壁の内部などに営巣している場合には、単純な巣の撤去だけではなく、
「どこから侵入しているのか」
「建物に隙間や劣化がないか」
まで確認した方がよいケースがあります。
売却を予定しているのであれば、
ハチの巣を単独の問題として見るのではなく、建物全体の管理状態を確認するきっかけにすること
が重要です。
■空き家は「何か起きてから」ではなく定期管理が重要
空き家管理で大切なのは、問題が発生してから対応することだけではありません。
・庭木の繁茂
・雑草
・ハチの巣
・害獣の侵入
・雨漏り
・郵便物の蓄積
・窓ガラスの破損
・不法投棄
・外壁や屋根の異常
などを定期的に確認することで、多くのトラブルを早い段階で発見できます。
特に所有者が遠方に住んでいる場合には、
「何かあったら近所の人から連絡が来るだろう」
ではなく、
自分から定期的に状態を確認できる仕組みを作っておくこと
が重要です。
■まとめ|ハチの巣そのものより「発見後にどう対応したか」が重要
空き家にハチの巣ができたからといって、直ちに所有者が損害賠償責任を負うわけではありません。
しかし、
ハチの巣があることを知っていた。
近隣住民から連絡を受けていた。
危険な状態であることを認識していた。
それにもかかわらず放置していた。
こうした事情が重なるほど、事故が発生した場合に所有者の管理責任が問題になる可能性は高くなります。
八王子市でも、空き家敷地内のハチの巣については所有者等が対応する必要があると明確に案内されています。
空き家は、建物を所有しているだけで維持できるものではありません。
特に相続した実家など、「まだ売るかどうか決めていない空き家」こそ、定期的な確認が重要です。
株式会社cocoro不動産では、八王子市内の空き家・ご実家について、売却前の段階からご相談を承っています。
雑草、ハチの巣、動物の侵入跡、郵便物の蓄積、建物まわりの異常など、「まず現在どうなっているのか確認したい」という段階でもお気軽にご相談ください。
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【本ブログ監修者】

株式会社cocoro不動産 代表取締役
★柴田祐介(しばた ゆうすけ)1981年生まれ。
大手不動産会社にて、八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
建築についても学び、不動産取引だけでなく建物・土地の状況を含めた総合的な視点から不動産売却をサポートしています。
【保有資格】宅地建物取引士/二級建築士/2級FP技能士/相続アドバイザー二級/秘書検定2級/既存住宅状況調査技術者