相続した家に荷物が大量に残っていても売却できる?
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親が亡くなり実家を相続したものの、家の中には家具・家電・衣類・食器・本・写真・布団などが大量に残っている。
「これを全部片付けないと家は売れないのだろうか?」
相続した不動産の売却相談では、非常によくあるご質問です。
結論から申し上げると、家の中に大量の荷物が残っていても、不動産を売却すること自体は可能です。
ただし、
「荷物がある状態で売却活動を始めること」
と、
「荷物をそのまま残した状態で買主へ引き渡すこと」
は全く別の話です。
また、相続不動産の場合は、荷物そのものが相続財産になっているケースもあるため、単純に「全部捨ててしまえばよい」と考えるのは危険です。
今回は、相続した家に大量の家財が残っている場合の売却方法について、不動産売買の実務を踏まえて詳しく解説します。
荷物が残っていても「売却活動」は始められる
まず知っていただきたいのは、
家財をすべて処分してからでなければ、不動産会社へ査定を依頼できないわけではない
ということです。
タンス、ベッド、冷蔵庫、テレビ、食器、衣類、書籍などがそのまま残っていても、不動産会社による査定は可能です。
むしろ、
「片付けにいくら掛かるかわからない」
「何から手を付ければよいかわからない」
「遠方に住んでいて片付けに通えない」
という場合には、先に不動産会社へ相談した方がよいケースもあります。
不動産の売却方法によっては、
・売主がすべて撤去してから引き渡す
・売買契約後、引渡しまでに撤去する
・買主側が残置物を引き取る条件で売却する
など、いくつかの方法が考えられるからです。
原則は「引渡しまでに売主が撤去」
一般の個人が中古住宅を購入する場合、通常は売主が家具や家電などを撤去し、空の状態で引き渡します。
売買契約書でも、
「残置物は売主の責任と負担において撤去する」
という内容を取り決めることがあります。
そのため、
荷物があるから売れないのではなく、引渡しまでにどう処理するのかを決める必要がある
という考え方が正確です。
例えば4月に売買契約を締結し、6月末に引渡しを行うのであれば、契約締結後の約2か月間で家財を撤去する方法もあります。
必ずしも売却活動を始める前に、すべて処分する必要はありません。
「残置物あり」のまま売却する方法もある
一方、不動産会社による買取や、リフォームを前提とした事業者への売却などでは、
家具・家電・生活用品などを残したまま引き渡せる場合があります。
いわゆる「残置物あり」「現況のまま」といった条件です。
相続人が遠方に住んでいる場合や、戸建て一軒分の家財が残っている場合には、大きなメリットがあります。
ただし、買主が処分費用を負担することになるため、その費用が売買価格に反映されることがあります。
例えば、
「家財処分に数十万円掛かるため、その分を価格に織り込む」
といった考え方です。
したがって、
自分で撤去して一般市場で売る方がよいのか、荷物ごと引き受けてもらう方がよいのか
を比較することが重要です。
相続の場合、勝手に荷物を捨ててはいけないことがある
ここは非常に重要です。
家の中にある家具・家電・貴金属・骨董品・現金・書類などは、不動産とは別の「動産」ですが、亡くなった方の所有物であれば相続財産になる可能性があります。
相続開始後、遺産分割が成立するまでは、原則として遺産は共同相続人の共有状態となります。
そのため、例えば兄弟3人が相続人であるにもかかわらず、そのうち1人が独断で家財をすべて処分してしまうと、後から問題になる可能性があります。法務省も、相続開始後は原則として遺産が法定相続分に応じた共有状態となり、共有財産の管理・処分について相続人間で決める必要があると説明しています。
特に注意したいのは、
・現金
・預金通帳
・印鑑
・権利証や登記識別情報
・生命保険関係書類
・株式関係書類
・貴金属
・時計
・美術品
・骨董品
・思い出の品
などです。
一見すると不要品に見えるものの中に、財産的価値のあるものや相続手続に必要な書類が混ざっていることがあります。
家財処分の前に「仕分け」が重要
大量の家財が残っている場合、最初からすべてを廃棄物として扱うのではなく、まず次のように分けることをおすすめします。
①相続手続に必要なもの
通帳、印鑑、保険証券、契約書、固定資産税関係書類、権利証などです。
②財産価値がある可能性のあるもの
貴金属、時計、骨董品、絵画、ブランド品、古銭などです。
③相続人が保管したいもの
写真、アルバム、手紙、記念品などです。
④売却・リユースできるもの
比較的新しい家具や家電などです。
⑤廃棄するもの
上記以外の家財です。
この順番で整理すると、大切なものを誤って処分してしまう可能性を下げられます。
不用品回収業者なら誰でもよいわけではない
家一軒分の荷物を処分する場合、軽トラックやトラックを使用する不用品回収業者へ依頼することもあります。
しかし、ここにも注意点があります。
家庭から排出される廃棄物は原則として一般廃棄物に該当し、市区町村の許可または委託を受けずに家庭ごみを収集運搬することは認められていません。
環境省も、「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」があるだけでは、家庭から出る廃棄物を収集できるわけではないと注意喚起しています。
そのため、遺品整理会社へ依頼するときも、
「誰が廃棄物を収集・運搬するのか」
を確認しておくことが大切です。
八王子市には大量の遺品整理等に対応する制度もある
八王子市では、遺品整理などによって一時的に大量の家庭ごみが出て、通常の収集では間に合わない場合などを対象として「臨時ごみ」の制度があります。
2026年7月時点の八王子市の案内では、概ねトラック1台分以上の大量のごみなどについて、条件を満たす場合に市へ相談できる仕組みとなっています。許可業者へ依頼する場合には、市による現地調査が必要になるケースもあります。
相続した家が八王子市内にある場合、
「民間業者へ全部任せる」
だけではなく、
「市の制度を利用できないか」
も確認しておくとよいでしょう。
内覧前に荷物を撤去した方が高く売れる?
これはケースによります。
ただし、一般の個人を買主として販売する場合には、家財を整理した方が売却しやすくなることはあります。
大量の家具が置かれていると、
・部屋が狭く見える
・床や壁の状態が確認できない
・収納内部を確認できない
・買主が生活をイメージしにくい
・片付け費用が高そうに感じる
といった問題が生じるためです。
特に空き家の場合、
「荷物が多い=長期間放置されている家」
という印象を持たれることもあります。
ただし、まだ売却価格もわからない段階で数十万円掛けて家財処分を行うことが必ず正解とは限りません。
まず査定を行い、
不動産としてどのくらいの価格で売れるのかを把握してから、片付け費用を掛けるか判断する
という順番も有効です。
建物を解体する予定なら、家財処分との順番にも注意
古い戸建ての場合、
「どうせ建物を解体するなら、家具も家の中に残しておけばよいのでは?」
と思われる方もいます。
しかし、建物の解体工事と家庭から出る家財の処理は同じものではありません。
家庭の家具や生活用品などを、建物と一緒に当然に処分できると考えるのは避けた方がよいでしょう。
解体業者へ依頼する場合でも、
・家財は誰が処分するのか
・処分費はいくらか
・どの業者が収集運搬するのか
を事前に確認することが重要です。
家財処分費は売却時の「譲渡費用」になる?
税金についても注意が必要です。
不動産を売却した場合、
売却代金-取得費-譲渡費用-特別控除
などによって課税譲渡所得を計算します。
国税庁は譲渡費用について、「土地や建物を売るために直接かかった費用」と説明しており、仲介手数料、売主負担の印紙税、一定の建物取壊し費用などを例示しています。
したがって、
「相続した家の荷物を処分した費用だから、当然すべて譲渡費用になる」
とは限りません。
家財整理費用の税務上の取り扱いについては、支出目的や内容によって判断が異なる可能性があるため、税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
不動産より先に「相続登記」の確認を
荷物の問題とは別に、相続した不動産を売却する場合には相続登記も重要です。
2024年4月1日から相続登記は義務化されており、不動産を相続によって取得したことを知った日から3年以内の登記申請が原則として必要です。
さらに、2024年4月1日より前に発生した相続についても義務化の対象となっています。
一定の場合、2027年3月31日が期限となるため、古い相続のまま名義変更していない不動産は特に注意が必要です。
なお「相続人申告登記」を行っただけでは、不動産を売却するための所有権関係を公示したことにはならないため、実際に売却する際には相続登記が必要となります。
売買契約書では「残置物」を曖昧にしない
荷物を残した状態で売却する場合には、売買契約書での取り決めが非常に重要です。
例えば、
・どの家具を残すのか
・どの家電を残すのか
・誰が処分費を負担するのか
・引渡し後の残置物の所有権をどうするのか
・売主が引渡しまでに撤去する範囲
・エアコンや照明器具を残すのか
・物置内の荷物をどうするのか
などを明確にしておく必要があります。
単に、
「現況有姿で引渡し」
と書けば、家の中のすべての家財について処理方法が決まるとは限りません。
不動産そのものの「現況」と、動産である「残置物」は分けて考えた方が安全です。
売却前に絶対確認したい5つのポイント
相続した家に大量の荷物が残っている場合には、次の順番で整理するとスムーズです。
- 相続人が誰なのか確認する
- 遺言書・遺産分割の内容を確認する
- 不動産の相続登記を確認する
- 家財の中から重要書類・貴重品を仕分ける
- 不動産査定と家財処分見積りを比較して売却方法を決める
特に重要なのは、最初から片付け業者だけに相談しないことです。
数十万円を掛けて家財を全部処分した後で、
「実はそのまま買取できた」
というケースも考えられます。
反対に、一般の買主へできるだけ良い条件で売りたいのであれば、きれいに片付けてから販売した方が有利になる場合もあります。
まとめ|大量の荷物があっても、まず不動産の価値を確認する
相続した家に大量の荷物が残っていても、不動産を売却することはできます。
重要なのは、
「荷物を全部捨ててから不動産会社へ相談する」のではなく、「不動産をどう売るか決めてから荷物の処理方法を決める」ことです。
相続した戸建ての場合、
・一般の買主へ売却する
・荷物を撤去してから売却する
・契約後に撤去する
・残置物ごと買い取ってもらう
・建物を解体して土地として売る
など複数の方法があります。
どの方法が最も適しているかは、建物の状態、立地、土地価格、家財の量、相続人の状況によって異なります。
また、相続人が複数いる場合には、家財も相続財産である可能性があるため、一人の判断で大量処分を進めないことも大切です。
八王子市内の相続不動産では、郊外の戸建てなどで家一軒分の家具や生活用品がそのまま残っているケースも珍しくありません。
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【本ブログ監修者】

株式会社cocoro不動産 代表取締役
★柴田祐介(しばた ゆうすけ)1981年生まれ
大手不動産会社にて、八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
建築についても学び、不動産の価格だけではなく、建物・土地・権利関係などを含めた総合的な視点から不動産売却をサポートしています。
【保有資格】
宅地建物取引士/二級建築士/2級FP技能士/相続アドバイザー二級/秘書検定2級/既存住宅状況調査技術者