用途地域をまたぐ土地|建ぺい率・容積率・用途制限はどうなる?
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土地を調査していると、1つの敷地の中に「第一種低層住居専用地域」と「第一種住居地域」、「第一種住居地域」と「近隣商業地域」など、複数の用途地域が指定されているケースがあります。
特に、幹線道路沿いとその背後地の境界付近では珍しくありません。
このような土地について、
「面積の大きい方の用途地域だけを見ればいい」
と思われることがありますが、実際にはそう単純ではありません。
建物の用途、建ぺい率、容積率、高さ制限、防火規制、日影規制などによって、用途地域をまたぐ場合の考え方がそれぞれ異なるからです。
不動産売買では、ここを正確に整理しなければ「思っていた大きさの建物が建てられない」「予定していた用途の建物が建築できない」といった問題につながる可能性があります。
今回は、用途地域をまたぐ土地について、建築基準法上の考え方を詳しく解説します。
■そもそも用途地域とは?
用途地域とは、都市計画法に基づいて定められる土地利用のルールです。
住宅地、商業地、工業地など、それぞれの地域に適した土地利用を誘導するため、現在は13種類の用途地域があります。
用途地域によって、
・建築できる建物の用途
・建ぺい率
・容積率
・建物の高さ
・道路斜線、北側斜線などの斜線制限
・日影規制
などが変わります。
そのため、不動産売買では用途地域の確認が非常に重要です。
そして注意したいのが、用途地域の境界線は必ずしも土地の筆界や道路境界に沿っているわけではないという点です。
都市計画上の境界線が、一筆の土地の途中を横切ることもあります。
■最も重要なのは「全部同じルールではない」ということ
用途地域をまたぐ土地を理解するうえで、最も重要なのがこの点です。
代表的な扱いを整理すると、おおむね次のようになります。
| 規制 | 用途地域をまたぐ場合の基本的な考え方 |
|---|---|
| 建物の用途 | 原則として敷地の過半による |
| 建ぺい率 | 各区域を加重平均 |
| 容積率 | 各区域を加重平均 |
| 外壁後退 | 各部分ごと |
| 高さ制限 | 各部分ごと |
| 斜線制限 | 各部分ごと |
| 高度地区 | 各部分ごと |
| 日影規制 | 日影を生じさせる区域等に応じて判定 |
| 防火・準防火地域 | 別途、防火規制特有の判定 |
つまり、
「敷地の60%が第一種住居地域だから、敷地全部について第一種住居地域の建ぺい率・容積率になる」
という考え方は正しくありません。
東京都内の自治体の建築実務資料でも、用途制限は過半、建ぺい率・容積率は加重平均、高さ制限等はそれぞれの区域ごとに適用する考え方が示されています。
■①建物の「用途」は原則として敷地の過半で判断する
まず、住宅・店舗・事務所・ホテル・工場など「何を建てられるのか」という用途制限です。
建築基準法第91条では、敷地が複数の用途地域にまたがる場合、一定の例外を除いて、敷地の過半が属する地域の規定を敷地全体に適用するという考え方が定められています。
例えば、
敷地面積150㎡
・第一種低層住居専用地域……90㎡
・第一種住居地域………………60㎡
だったとします。
第一種低層住居専用地域が敷地全体の60%を占めています。
この場合、建物の用途制限については、原則として第一種低層住居専用地域側の規制が敷地全体に適用されることになります。
ここで重要なのが、
建物をどちら側に建てるかではない
という点です。
例えば建物本体を第一種住居地域側の60㎡部分に寄せたとしても、それだけで第一種住居地域の用途制限になるわけではありません。
判断の基準となるのは原則として建築物の敷地全体に占める各用途地域の割合です。
■3つ以上の用途地域にまたがる場合はさらに注意
さらに専門的になりますが、3種類以上の用途地域にまたがる場合、
「一番面積の大きい用途地域だけを見る」
と単純に判断できない場合があります。
例えば、ある建築用途について、
A地域……建築可能 40%
B地域……建築可能 20%
C地域……建築不可 40%
という土地であれば、建築可能な地域の合計は60%です。
実務上は、その建築用途を認めている地域の面積を合計して過半を占めるかどうかという判断が必要になるケースがあります。
京都市や千葉県の建築行政資料でも、3種類以上の用途地域にまたがる場合について、この考え方が示されています。
これは一般的な不動産情報サイトではあまり説明されない部分ですが、事業用地などでは重要な論点です。
■②建ぺい率は「過半」ではなく加重平均
次に建ぺい率です。
ここは用途制限とはまったく考え方が違います。
建築基準法第53条第2項では、敷地が建ぺい率の異なる区域にまたがる場合、それぞれの区域の面積割合に応じて計算することとされています。
例えば、
敷地面積150㎡
第一種低層住居専用地域
90㎡・建ぺい率40%
第一種住居地域
60㎡・建ぺい率60%
の場合。
それぞれ建築できる建築面積を計算します。
90㎡ × 40% = 36㎡
60㎡ × 60% = 36㎡
合計すると、
36㎡ + 36㎡ = 72㎡
したがって、
72㎡ ÷ 150㎡ = 48%
この敷地全体の基準建ぺい率は48%となります。
つまり、
40%でも60%でもなく48%
です。
このような計算を一般に「加重平均」「按分計算」などと呼びます。
■③容積率も面積割合による加重平均
容積率も基本的には同様です。
先ほどと同じ敷地で、
第一種低層住居専用地域
90㎡・容積率80%
第一種住居地域
60㎡・容積率200%
だったとします。
それぞれについて許容される延べ面積を計算すると、
90㎡ × 80% = 72㎡
60㎡ × 200% = 120㎡
合計
192㎡
したがって、
192㎡ ÷ 150㎡ = 128%
となります。
指定容積率として考えれば、この敷地は128%という計算になります。
自治体の建築確認実務でも、用途地域が異なる場合の建ぺい率・容積率について面積割合による按分計算が示されています。
■ただし「指定容積率=実際に使える容積率」とは限らない
ここは不動産売買では非常に重要です。
用途地域ごとの指定容積率を加重平均しただけで、
「この土地は128%まで建築できる」
と断定するのは危険です。
なぜなら容積率には、
前面道路幅員による容積率制限
があるからです。
前面道路の幅員が12m未満の場合、道路幅員に一定の係数を掛けて算出した容積率と指定容積率を比較し、原則として厳しい方が適用されます。
さらに用途地域によって道路幅員に掛ける係数自体が異なる場合があります。
そのため用途地域をまたぐ土地では、
指定容積率の按分だけでなく、前面道路幅員による制限を含めた「基準容積率」の確認
まで必要です。
単純な用途地域図だけでは建築可能ボリュームを確定できない理由の一つです。
■④建物の高さは「過半の用途地域」では決まらない
さらに注意したいのが高さ制限です。
建築基準法第91条では、
・外壁後退
・絶対高さ
・道路斜線
・隣地斜線
・北側斜線
・日影規制
などは、いわゆる過半ルールから除外されています。
そのため、例えば敷地内に、
第一種低層住居専用地域
と
第一種住居地域
が存在する場合、
「第一種住居地域が過半だから、第一種低層住居専用地域の高さ制限は関係ない」
ということにはなりません。
原則として、建物の各部分が存在する位置について、それぞれの地域に対応した高さ制限を検討します。
例えば第一種低層住居専用地域には、都市計画によって10mまたは12mの絶対高さ制限が定められます。
一方、第一種住居地域には同じ絶対高さ制限がないことがあります。
このため、一棟の建物であっても、
「こちら側は高さを抑えなければならない」
「こちら側はそれより高くできる可能性がある」
という複雑な建築形状になることがあります。
東京都の資料でも、用途地域による道路斜線、隣地斜線、北側斜線、絶対高さなどの違いが整理されています。
■⑤高度地区も用途地域とは別に見る
八王子市で土地を調査する際には「高度地区」も重要です。
例えば、
第1種高度地区
第2種高度地区
第3種高度地区
などが指定されている場合があります。
高度地区は、主として北側隣地の日照や住環境などを保護するため、建築物の高さを制限する都市計画です。
敷地の中で高度地区の指定が異なれば、基本的にはその区域ごとの制限を検討します。
したがって、
用途地域の境界だけを見るのではなく、高度地区の境界も確認する必要があります。
建築基準法第58条でも、高度地区内の建築物は都市計画で定められた高さの内容に適合しなければならないとされています。
■⑥日影規制も単純な「過半」ではない
日影規制も非常に専門的な論点です。
日影規制は、単純に
「敷地の過半がどの用途地域に入っているか」
だけでは判断しません。
建物の高さや位置、対象区域、日影を生じさせる場所などを基に検討する必要があります。
そのため、用途地域・高度地区・日影規制区域の境界付近にある土地では、設計段階で日影図を作成しないと建築可能なボリュームを正確に判断できないことがあります。
大田区の建築資料でも、用途地域等が異なる場合、高さは区域ごと、日影についてもそれぞれの規制に応じて判定する整理がされています。
■⑦防火地域・準防火地域も別ルール
さらに、
・防火地域
・準防火地域
・指定なし
の境界が敷地や建物にかかる場合も注意が必要です。
防火規制は、単純な用途地域の過半ルールとは異なります。
例えば建築物が防火地域と準防火地域にまたがる場合には、原則としてより厳しい防火地域側の規制が建築物全体に及ぶケースがあります。
したがって、
「準防火地域部分の方が面積が大きいから準防火地域扱い」
とは限りません。
防火地域の指定は建築コストにも影響するため、不動産購入時には非常に重要です。
■不動産売買で特に注意したい「用途境の位置」
実務上、さらに問題になるのが、
用途地域の境界線が土地のどこを通っているのか
という問題です。
都市計画図やインターネットのGISを見ると、用途地域が色分けされています。
しかし、その線だけを見て、
「ここからここまでが第一種住居地域です」
と確定できるとは限りません。
八王子市も公開している都市計画図について、
位置や境界を証明するものではなく、地図の精度やデータ作成上の誤差を含む参考情報
であることを明記しています。
八王子市では、「はちおうじマップ」のほか、都市計画図、市役所窓口でも用途地域等の情報が提供されています。
用途境が敷地の中央付近を通るなど、数㎡の差によって過半が逆転する可能性がある土地では、インターネット上の都市計画図だけで判断せず、行政への確認が重要です。
■「筆」ではなく「建築物の敷地」で考えることも重要
もう一つ専門的なポイントがあります。
建築基準法上の判定は、必ずしも登記簿上の「一筆の土地」を単位としているわけではありません。
例えば、
100番1
100番2
100番3
という3筆を一体として1棟の住宅の敷地として利用するのであれば、その一体の土地が建築基準法上の「敷地」として扱われます。
逆に、大きな一筆の土地でも、建築計画上の敷地設定によって扱いが変わるケースがあります。
したがって、不動産広告に記載されている土地面積だけから用途地域の割合を判断するのではなく、
最終的にどの範囲を建築物の敷地として設定するのか
という設計上の確認が必要になることがあります。
ただし、敷地を分ければ接道義務や最低敷地面積、地区計画など別の規制が問題になるため、単純に用途地域上有利になるよう敷地を分ければよいという話ではありません。
■敷地面積の最低限度にも注意
用途地域によっては「建築物の敷地面積の最低限度」が定められている場合があります。
これについても用途地域がまたがる場合には確認が必要です。
建築基準法第53条の2は、都市計画に最低敷地面積が定められた場合の規制を定めています。
自治体の実務資料では、最低敷地面積について用途地域がまたがる場合、敷地の過半が属する用途地域の規定を適用する取扱いも示されています。
土地を分割して売却する場合には特に注意が必要な項目です。
■地区計画が指定されている土地はさらに注意
用途地域だけ確認して安心してはいけません。
土地によっては、
・地区計画
・特別用途地区
・高度地区
・建築協定
・景観計画
・風致地区
など、さらに別の規制が指定されていることがあります。
八王子市の地区計画では、
・建物用途
・容積率
・建ぺい率
・最低敷地面積
・壁面位置
・高さ
などを個別に定めることができます。
つまり、
「用途地域上は建築できる」
としても、
地区計画によって建築できない
ということがあります。
用途地域をまたぐ土地ほど、用途地域以外の都市計画規制まで一体的に確認することが重要です。
■売却時には「建築可能ボリューム」が価格に影響することがある
用途地域をまたぐ土地は、それだけで価値が低い土地というわけではありません。
むしろ、商業系用途地域や高い容積率の地域が一部含まれることで、建築可能面積が大きくなるケースもあります。
一方、
・低層住居専用地域が過半になる
・高さ制限が途中から厳しくなる
・日影規制が複雑になる
・防火規制が強くなる
・地区計画が重なる
といった場合には、買主側が想定する建築計画に影響する可能性があります。
特に、
・賃貸マンション用地
・アパート用地
・店舗用地
・事業用地
・建売用地
では、「土地面積」よりも実際に何㎡の建物を建築できるかが価格形成に大きく影響します。
そのため、用途地域をまたぐ土地を売却する場合には、
「第一種住居地域・近隣商業地域」
と記載するだけではなく、
それぞれが敷地の何㎡を占めているのか
まで調査しておくと、買主や建築会社が検討しやすくなります。
■実務では「用途境の測定」が重要になるケースもある
例えば300㎡の土地について、
第一種低層住居専用地域 149㎡
第一種住居地域 151㎡
なのか、
第一種低層住居専用地域 151㎡
第一種住居地域 149㎡
なのかでは、建物用途の判定が変わる可能性があります。
わずか2㎡の違いです。
このような土地では、
「地図を見るとだいたい半分」
という確認では不十分です。
都市計画境界の根拠を確認したうえで、必要に応じて測量図や座標などと重ね合わせ、面積を算出する作業が必要になる場合があります。
これが用途地域をまたぐ土地の調査が難しい理由の一つです。
■不動産会社が確認すべきポイント
用途地域をまたぐ土地を売買する場合、少なくとも次の項目を確認します。
- 用途地域の種類
- 用途境の位置
- 各用途地域に属する敷地面積
- 建築物の用途制限
- 指定建ぺい率
- 指定容積率
- 前面道路幅員による容積率制限
- 高度地区
- 道路・隣地・北側斜線
- 絶対高さ制限
- 日影規制
- 防火地域・準防火地域
- 最低敷地面積
- 地区計画その他の条例
- 建築計画上の敷地設定
特に重要なのは、
「用途地域を調べた」ことと「建築可能な建物を調べた」ことは同じではない
という点です。
最終的な建築可否については、具体的な建築計画を基に建築士や確認検査機関、行政等で確認する必要があります。
■まとめ
用途地域をまたぐ土地は、通常の土地より都市計画・建築規制の調査が複雑です。
重要なのは、
用途制限=原則として過半
建ぺい率・容積率=面積割合による加重平均
高さ・斜線等=各区域ごとに検討
という違いを理解することです。
さらに、防火地域、日影規制、高度地区、地区計画などは、それぞれ別のルールがあります。
そのため、
「敷地の半分以上がこの用途地域だから全部同じ規制」
と判断するのは危険です。
用途地域の境界付近にある土地では、都市計画図だけでなく、用途境の位置、面積割合、建築基準法上の各規制を個別に確認することが重要です。
不動産売却の際にも、これらを事前に整理しておけば、買主側の建築計画が具体化しやすくなり、契約後の認識違いやトラブルの防止につながります。
■よくあるご質問
Q.土地の60%が第一種住居地域、40%が近隣商業地域なら、全部第一種住居地域になりますか?
建物の用途制限については、原則として第一種住居地域側の規制が基準になります。
ただし、建ぺい率・容積率まで第一種住居地域の数字になるわけではなく、それぞれの区域の面積割合によって計算します。
Q.建物を近隣商業地域側だけに建てれば近隣商業地域の用途制限になりますか?
原則として建物の配置だけでは決まりません。
建築基準法第91条の用途制限では、建築物の敷地全体に占める用途地域の割合が重要になります。
Q.用途地域をまたぐ土地は売却しにくいですか?
必ずしもそうではありません。
ただし、建築できる用途や規模を正確に把握する必要があります。
特にマンション・アパート・店舗・事業用地では、用途地域の割合によって土地評価が変わる可能性があります。
Q.用途地域の境界はインターネットの地図だけで判断できますか?
参考にはなりますが、境界付近の土地については注意が必要です。
八王子市も公開している都市計画情報について、位置や境界を証明するものではなく、誤差を含む参考情報である旨を明示しています。
数㎡の違いで用途制限の判断が変わる場合などは、行政への確認や測量資料との照合が重要になります。
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【本ブログ監修者】

株式会社cocoro不動産 代表取締役
★柴田祐介(しばた ゆうすけ)1981年生まれ。
大手不動産会社にて、八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
【保有資格】
宅地建物取引士/二級建築士/2級FP技能士/秘書検定2級/既存住宅状況調査技術者/相続アドバイザー2級