土地の「道路付け」どれが良い?
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土地を探していると、「南道路だから条件が良い」「北道路だから少し評価が下がる」「角地だから価値が高い」といった話を聞くことがあります。
確かに、土地のどの方向に道路があるかは、日当たりや建物配置、駐車場のつくり方などに影響します。
しかし、不動産売買の実務では、道路付けを東西南北だけで判断することはできません。
むしろ重要なのは、
・その道路が建築基準法上の道路なのか
・道路幅員は何mあるのか
・敷地が何m道路に接しているのか
・公道なのか私道なのか
・セットバックが必要なのか
・道路と敷地に高低差がないか
・車の出入りがしやすいか
・建築できる建物の大きさに影響しないか
といった点です。
つまり「道路付けが良い土地」とは、単純に南道路の土地ではありません。
今回は、不動産売却・土地購入の実務で重要になる「道路付け」について、少し専門的な部分まで詳しく解説します。
そもそも「道路付け」とは?
不動産業界でいう「道路付け」とは、一般的には敷地に対して道路がどの方向に接しているか、またどのような状態で接しているかを意味します。
例えば、
「南側6m公道に10m接道」
「北側4m私道に8m接道」
「東側5m公道、西側4m公道の角地」
といった表現です。
ここで注目していただきたいのは、「南」「北」という方角だけではありません。
道路の幅員、道路種別、公道・私道、接道長さなども含めて道路付けを判断します。
まず最優先で確認するのは「建築基準法上の道路か」
土地の道路条件を見るとき、最初に確認しなければならないのが、
その道が建築基準法上の道路として認められているか
という点です。
建築基準法では、原則として建築物の敷地は、建築基準法上の道路に2m以上接していなければなりません。
また、建築基準法上の道路は原則として幅員4m以上であり、道路法による道路、開発道路、位置指定道路などが法第42条で定められています。
八王子市でも、道路種別について、
・42条1項1号道路
・42条1項2号道路
・42条1項3号道路
・42条1項4号道路
・42条1項5号道路(位置指定道路)
・42条2項道路
などに分類して確認しています。
したがって、現地を見ると立派な舗装道路であったとしても、
「道路のように見える」ことと「建築基準法上の道路である」ことは別問題
です。
土地売却では、ここを最初に確認することが非常に重要です。
「南道路が一番良い」は本当?
一般的には南道路の土地は好まれやすい傾向があります。
理由は比較的分かりやすく、道路側が南になるため、南側から日照を確保しやすいからです。
特に低層住宅地では、
道路
↓
駐車スペース
↓
庭
↓
建物
という配置を取ることで、建物南側に比較的大きな空間を確保できます。
そのため、1階リビングにも光を取り込みやすくなります。
しかし、南道路だから無条件に優れているわけではありません。
南道路のメリット
南道路では、道路部分そのものが建物の南側の空間になるため、前面建物との距離を確保しやすくなります。
また、南側道路から駐車場を配置し、その奥に建物を建築すれば、日当たりを確保しやすいという特徴があります。
住宅地では視覚的な明るさも感じやすいため、売却時に購入希望者から好印象を持たれることもあります。
南道路にもデメリットがある
一方で、南側はリビングや大きな窓を設置したい方向でもあります。
つまり、
最も大きな窓を設けたい方向が道路側になる
という問題があります。
人通りの多い道路の場合、
・歩行者から室内が見える
・車からリビングが見える
・カーテンを閉める時間が増える
ということもあります。
南道路=必ず住みやすい、とは限らないのです。
実は「北道路」が非常に使いやすいこともある
北道路は南道路より不利だと思われがちですが、建物配置によっては非常に使いやすい土地になります。
北道路の場合、
道路
↓
玄関・駐車場
↓
建物
↓
南庭
という配置ができます。
つまり、玄関や駐車場など日当たりをそれほど必要としないスペースを北側にまとめ、南側を居住空間や庭として使うことができます。
これは住宅設計上、かなり合理的な配置です。
北道路最大のメリットは「南側のプライバシー」
北道路の場合、南側が道路に面していないため、南側のリビングや庭が道路から直接見えにくくなります。
南側隣地との距離を適切に確保できれば、
・南向きリビング
・大きな窓
・プライベートな庭
・ウッドデッキ
などを計画しやすくなります。
つまり北道路は、
道路側=玄関・水回り等
南側=リビング・庭
というゾーニングが非常にしやすい土地でもあります。
東道路は「朝の日差し」が魅力
東道路では、朝から午前中に道路側から日光が入りやすくなります。
東側にリビングやダイニングを配置すれば、朝食の時間帯に自然光を取り込みやすくなります。
また、南道路ほど道路側から室内が見えやすくなるわけではないため、
日当たりとプライバシーのバランスを取りやすい道路付け
ともいえます。
南側隣地との間に十分な空間を確保できる土地であれば、東道路でも南向きのリビングを十分計画できます。
西道路は本当に悪い?
西道路について「西日が暑いから良くない」と考える方もいます。
確かに夏場の強い西日は住宅設計上注意が必要です。
しかし、現在の住宅では、
・Low-E複層ガラス
・高断熱サッシ
・外付けシェード
・庇
・窓の大きさや配置
などによって日射をある程度コントロールできます。
また、午後から夕方にかけて明るさを確保しやすいため、生活時間によっては西側の日当たりをメリットと感じる場合もあります。
したがって西道路という理由だけで土地を低く評価するのは適切ではありません。
実務では「方角」より道路幅員の方が重要なこともある
例えば次の2つの土地があったとします。
A
南側道路
幅員3.6m
42条2項道路
B
北側道路
幅員6m
公道
「南道路」という点だけ見ればAが良さそうに見えます。
しかし、土地としての利用しやすさまで考えるとBの方が有利になる可能性があります。
Aの場合、42条2項道路であれば、原則として道路中心から2mの位置まで敷地を後退させる「セットバック」が必要になる可能性があります。
八王子市でも、42条2項道路に接する土地では、道路後退線を確認し、必要に応じて敷地を後退させる扱いとなっています。
例えば100㎡の土地でも、セットバック部分が5㎡あれば、実際に建築計画で有効に使える土地はその分小さくなります。
つまり、
南道路か北道路か以上に、道路種別や幅員が土地価値に影響する場合がある
ということです。
前面道路幅員は「建てられる大きさ」にも影響する
道路幅員は車の通りやすさだけの問題ではありません。
建築基準法上、前面道路の幅員が12m未満の場合には、道路幅員による容積率制限がかかることがあります。
例えば住居系用途地域では、原則として前面道路幅員に0.4を乗じた数字が容積率の上限計算に用いられます。
例えば幅員4mなら、
4m × 0.4 = 1.6
つまり160%です。
都市計画上の指定容積率が200%であっても、前面道路条件によって160%までしか利用できないケースがあります。
土地を見る際には、
「道路があるから問題ない」
ではなく、
道路幅員によって建築できるボリュームが変わらないか
まで確認する必要があります。
4m道路と6m道路では使いやすさがかなり違う
戸建住宅の場合、4m道路でも建築上問題のない土地は数多くあります。
ただし実際の生活では、
・車庫入れ
・車同士のすれ違い
・宅配車両
・ごみ収集車
・緊急車両
などを考えると、5~6m程度の道路は使いやすく感じることがあります。
特に駐車場へ道路と直角に車を入れる場合、道路幅員が狭いほど切り返しが必要になる可能性があります。
ただし幅員だけでなく、
・電柱の位置
・道路反対側の塀
・敷地間口
・駐車場位置
・道路の交通量
も影響するため、現地確認が重要です。
「接道2mあれば大丈夫」とは限らない
建築基準法上の接道義務だけでいえば、原則2m以上の接道が一つの基準です。
しかし土地としての使いやすさでは、接道間口が広い方が有利になることがあります。
例えば、
間口2.5m・奥行30m
という土地と、
間口10m・奥行15m
という土地では、同じ150㎡でも建築プランの自由度は大きく異なります。
間口が狭い土地では、
・駐車場配置
・玄関位置
・採光
・建物形状
・工事車両の搬入
などに制約が出ることがあります。
いわゆる旗竿地・路地状敷地では、この接道部分の幅員が特に重要になります。
角地は本当に価値が高い?
2方向が道路に面する角地は、一般的には開放感があり、建物配置の自由度も高くなりやすい土地です。
また、一定の条件を満たす角地では建ぺい率の緩和を受けられる場合があります。
八王子市では、一定の角敷地等について、建築基準法第53条第3項第2号に基づき建ぺい率を10%加算する規定があります。
例えば指定建ぺい率40%の地域で角地緩和が適用できれば、一定の場合に50%となります。
100㎡の土地なら、
40㎡ → 50㎡
と建築面積の上限が変わる可能性があります。
これは建築計画上、大きな違いです。
ただし「角地=必ず角地緩和」ではない
ここは非常に重要です。
単に2方向が道路に接していれば、自動的に角地緩和になるわけではありません。
道路の種類、道路の交わる角度、接道状況など、特定行政庁の基準を満たす必要があります。
八王子市でも角地緩和の対象となる敷地について具体的な基準を定めています。
さらに、角地には別の問題もあります。
例えば八王子市を含む東京都内では、一定の条件に該当する角敷地について「隅切り」が必要になることがあります。
そのため、
角地だから使える面積が増える
と単純には判断できません。
公道と私道なら公道の方が良い?
一般的には、売買時の説明が比較的シンプルなのは公道です。
しかし、
私道だから悪い土地というわけではありません。
東京の住宅地には私道に接している住宅が非常に多くあります。
重要なのは、
・誰が私道を所有しているか
・持分があるか
・通行権は確保されているか
・掘削に関する権利関係はどうなっているか
・上下水道やガス管はどこを通っているか
・道路補修費用の負担はどうなっているか
という部分です。
例えば位置指定道路で建築基準法上の道路として問題なくても、道路所有者が複数人いる場合があります。
「建築できる道路か」という問題と「民法上安心して利用できる道路か」という問題は、分けて調査する必要があります。
道路と敷地の高低差も重要
八王子市では坂のある住宅地や造成地も多いため、道路付けを見る際には高低差も重要です。
例えば、
道路より敷地が2m高い土地
の場合、道路幅員が6mあったとしても、
・階段が必要
・駐車場造成が必要
・擁壁が必要
・建物へのアプローチが長くなる
可能性があります。
反対に道路より敷地が低ければ、
・雨水流入
・排水
・地下車庫
・擁壁
などを確認する必要があります。
つまり、
「南側6m公道」という情報だけでは、土地の良し悪しは判断できない
ということです。
道路の「交通量」も価格に影響する
同じ南道路でも、
住宅地内の6m道路
と、
交通量の多い幹線道路
では住環境が大きく異なります。
幹線道路の場合、
・騒音
・振動
・排気
・子どもの安全性
・車庫入れのしにくさ
などが問題になる場合があります。
一方で店舗や事業用地であれば、交通量や視認性がメリットになることもあります。
つまり道路条件の評価は、
その土地を何に使うか
によっても変わります。
行き止まり道路はどう評価する?
分譲地では、道路の奥が行き止まりになっているケースがあります。
行き止まり道路には、
・通過交通が少ない
・比較的静か
・子どもが飛び出すリスクを抑えやすい
というメリットがあります。
一方、
・車の方向転換
・消防車等の進入
・積雪時や工事時の車両通行
などを確認しておく必要があります。
転回広場が設置されているかどうかも重要です。
実務上「道路付けが良い土地」とは?
私が土地を確認するときは、「南道路かどうか」だけでは判断しません。
例えば戸建住宅用地であれば、
①建築基準法上の道路である
②公道または権利関係が明確な私道
③幅員が4m以上あり、できれば5~6m程度確保されている
④敷地間口が十分ある
⑤道路と敷地の高低差が少ない
⑥セットバックの影響が少ない
⑦車の出入りがしやすい
⑧日照を確保できる建物配置が可能
といった条件を総合的に確認します。
そのうえで南道路、東道路、北道路、西道路という方角を評価します。
道路付けを単純に並べるなら?
あえて一般的な住宅地について整理すると、
南道路
日当たりを確保しやすく、分かりやすく人気が出やすい道路付けです。
ただし南側が道路になるため、リビングのプライバシーには配慮が必要です。
東道路
午前中の日当たりが良く、比較的バランスが良い道路付けです。
南側にスペースを取れれば、十分明るい住宅を計画できます。
北道路
価格面で南道路より抑えられるケースがある一方、南側にプライベートな庭やリビングを配置しやすく、設計次第では非常に住みやすい土地です。
西道路
午後の日照を確保できます。
夏の西日対策は必要ですが、建物性能や窓配置によって調整できる部分も大きくあります。
私なら「方角」よりここを見ます
土地売買の実務で道路付けを確認するとき、優先順位としては、
道路種別
↓
接道義務
↓
道路幅員
↓
セットバック
↓
公道・私道
↓
接道間口
↓
道路との高低差
↓
車両進入
↓
方角
くらいの感覚です。
極端な話、
「南側3.6mの2項私道」
と
「北側6mの公道」
であれば、南道路だから前者が優れているとは限りません。
不動産の道路条件は、方角だけで評価すると大切な部分を見落としてしまいます。
土地売却では「道路条件を先に調査する」ことが重要
土地を売却するときも同じです。
査定価格を決めて販売を開始した後で、
「実は2項道路でした」
「セットバックが必要でした」
「私道持分がありませんでした」
「道路に見えていましたが建築基準法上の道路ではありませんでした」
と判明すると、売却条件を大きく見直さなければならないケースがあります。
八王子市では建築基準法上の道路種別を指定道路図等で確認できますが、市も最新情報については窓口確認を求めています。
そのため土地売却では、販売開始前に、
・建築指導課
・道路管理課等
・法務局
・現地
を組み合わせて調査することが大切です。
まとめ|「良い道路付け」は方角だけでは決まらない
土地の道路付けについて、「南・東・北・西のどれが一番良いですか?」と聞かれれば、一般的には南道路が分かりやすく評価されやすいといえます。
しかし、不動産実務としてはそれだけでは不十分です。
例えば、
北側6m公道・間口10m・平坦地
という土地の方が、
南側3.6m私道・間口4m・セットバックあり
という土地より利用しやすいことは十分あります。
道路付けを見るときには、
「どちら向きの道路か」ではなく「どのような道路に、どのように接している土地なのか」
を見ることが重要です。
特に八王子市では、古くからの住宅地、区画整理された住宅地、造成地、坂の多い住宅地などが混在しているため、道路条件も土地ごとに大きく異なります。
土地を売却するときには、単純な坪単価比較だけではなく、
道路種別・幅員・接道間口・セットバック・私道関係・高低差・建築条件まで確認したうえで査定する
ことが大切です。
土地の道路条件は、売却価格だけでなく、購入者がその土地にどのような建物を建てられるかにも直結します。
だからこそ、土地売却では「道路付け」を正確に調査することが非常に重要なのです。
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★監修者

柴田祐介(しばた ゆうすけ)
1981年生まれ。
大手不動産会社にて八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介に従事。
建築についても学び、不動産売買だけでなく建物・土地・相続など幅広い視点からご相談に対応しています。
宅地建物取引士、二級建築士、2級FP技能士、相続アドバイザー二級、秘書検定2級、既存住宅状況調査技術者