八王子市のひな壇住宅地|高低差のある土地を売却するときの注意点
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八王子市で不動産売却のご相談を受けていると、道路と敷地に高低差がある土地、隣地との間に擁壁がある土地、斜面を造成して段状に住宅が並ぶ「ひな壇住宅地」に出会うことが少なくありません。
八王子は平坦な市街地だけでなく、多摩丘陵や山地・丘陵地に接する住宅地が広く形成されており、造成時期や場所によって土地の成り立ちが大きく異なります。
このような土地を売却するときに重要なのは、「高台だから眺望が良い」「道路より高いから日当たりが良い」というメリットだけを見るのではなく、その高低差をどのような構造物で支えているのか、造成時の許認可や検査資料が残っているのか、現在の擁壁を建替え後も使用できるのかまで確認することです。
ひな壇住宅地とは?
ひな壇住宅地とは、傾斜している土地を造成し、それぞれの宅地を段状に配置した住宅地を一般的に指します。
上段宅地と下段宅地の間には擁壁が設置されることが多く、道路面より宅地が数メートル高くなっているケースもあります。
平坦地と比較すると、日照や眺望、道路からのプライバシー確保などで有利になる場合がある一方、土地を支える擁壁や排水施設の状態が、不動産価値や建替え計画に大きく影響します。
したがって、ひな壇住宅地では土地面積・用途地域・建ぺい率・容積率だけを確認しても、土地の利用価値を十分に判断できません。
最も重要なのは「擁壁の状態」
高低差のある土地で最初に確認したいのが擁壁です。
擁壁は、土圧によって土砂が崩れることを防ぐために設置される構造物です。
鉄筋コンクリート造、間知石積み、間知ブロック積み、コンクリートブロック系など、施工年代や造成方法によって様々な種類があります。
現地確認では、少なくとも次のような点を確認します。
・大きなひび割れがないか
・擁壁が道路側や隣地側へ傾いていないか
・表面が膨らんでいないか
・水抜き穴が設けられているか
・水抜き穴が詰まっていないか
・擁壁上部に別の擁壁やブロックが継ぎ足されていないか
・擁壁付近で地盤沈下が起きていないか
・大量の雨水が擁壁側へ集まる形状になっていないか
特に注意したいのが、既存擁壁の上にブロックや別の擁壁を継ぎ足して高くしている「増し積み擁壁」や、擁壁の上段にさらに別の擁壁が存在する「二段擁壁」です。
見た目には宅地として普通に使用できていても、現在の建築計画でその擁壁をそのまま安全な構造物として評価できるとは限りません。
「古い擁壁=違法」とは限らない
売却相談では、「擁壁の検査済証が見つからないのですが、違法なのでしょうか」と質問されることがあります。
しかし、資料がないことと違法であることは同義ではありません。
造成された年代が古い場合、所有者の手元に図面や許可書類が残っていないケースがあります。
反対に、外観がきれいだからといって、現在の法令上当然に安全性が確認されているとも限りません。
重要なのは、造成時期、開発許可・宅地造成関係の履歴、擁壁の構造、高さ、現在の状態などを一つずつ確認することです。
八王子市では、旧宅地造成等規制法による許可制度から、現在の盛土規制法による制度へ移行しています。
八王子市は2024年7月31日に市内全域を「宅地造成等工事規制区域」として指定しています。現在、一定規模以上の盛土・切土・土石の堆積などを行う場合には、盛土規制法に基づく許可が必要となります。
売却時には「昔の造成」と「これからの建替え」を分けて考える
ここは実務上非常に重要です。
既存住宅が問題なく建っていることと、将来その住宅を解体して新築住宅を建てられることは、必ずしも同じではありません。
買主が土地として購入する場合、建築会社は既存擁壁をそのまま利用できるかを検討します。
擁壁の安全性が確認できなければ、
・建物を擁壁から離す
・基礎を深くする
・杭などを検討する
・擁壁を造り直す
・土地の造成計画自体を変更する
といった対応が必要になる場合があります。
その結果、平坦地では必要のない工事費が発生する可能性があります。
売却価格を考えるときは、「現在住宅として使えているから問題ない」という視点だけではなく、買主が将来どの程度の追加負担なく利用できる土地なのか、という観点まで見る必要があります。
擁壁の所有者は誰なのか
隣地との高低差がある場合、擁壁そのものが誰の所有物なのかも重要です。
一般には高い側の土地を支えるための擁壁であるケースが多いものの、現場ごとに成り立ちは異なります。
境界線が擁壁の上端にあるのか、下端にあるのか、擁壁の途中を通っているのかによっても状況は変わります。
古い住宅地では、現地のブロックや擁壁と登記上・測量上の境界が必ずしも一致していないケースがあります。
そのため、売却前には測量図だけを見るのではなく、現地の境界標と擁壁位置を照合することが重要です。
高低差のある土地では「排水」が非常に重要
擁壁の安全性を考えるとき、構造そのものと同じくらい重要なのが水です。
雨水や地下水が擁壁裏側に溜まると、擁壁に通常以上の圧力が加わる可能性があります。
そのため擁壁には、背面に溜まる水を外へ逃がすための水抜き穴が設けられている場合があります。
現地では、
・水抜き穴の数や配置
・水抜き穴の詰まり
・雨天時の排水方向
・上段敷地からの雨水流入
・宅地内の排水設備
・擁壁周辺の湿潤状態
なども確認します。
擁壁に亀裂や膨らみがある場合、その原因が単純な経年劣化だけではなく、背面の排水不良にある可能性もあります。
「がけ」に該当する場合は建築計画にも注意
高低差が大きい土地では、単なる擁壁問題だけでなく、建築安全上の「がけ」に関する規制を検討する必要が生じることがあります。
土地を購入して建替えを予定している買主にとっては、建物をどこに配置できるのか、擁壁との離隔や構造上の対策が必要なのかが重要になります。
したがって、売却時に「現在家が建っているから、同じ位置に同規模の家を建てられます」と安易に説明することは避けるべきです。
建替えの可否や必要な対策は、現況の擁壁、土地の高低差、設計内容、法令、審査機関等の判断を踏まえて検討する必要があります。
盛土規制法も確認する
2023年5月26日に「宅地造成及び特定盛土等規制法」、いわゆる盛土規制法が施行されました。
従来の宅地造成等規制法を抜本的に改正したもので、土地の用途にかかわらず危険な盛土等を包括的に規制する制度です。
八王子市では市内全域が規制区域です。
これは「八王子市内のすべての既存宅地に問題がある」という意味ではありません。
一方、今後造成工事や擁壁工事を計画する場合には、土地の形質変更の内容によって盛土規制法上の手続きが必要になる可能性があります。
ひな壇住宅地を購入して大規模な造成を伴う建替えを検討する買主にとっては、重要な確認項目です。
ハザードマップとの関係
丘陵地や山に近い住宅地の場合、土砂災害警戒区域等に該当しているかも確認します。
八王子市では総合防災ガイドブックとハザードマップを公開しており、土砂災害や洪水等の災害リスクを確認できます。
ただし、「擁壁がある土地=土砂災害警戒区域」ということではありません。
擁壁の有無、高低差、盛土、土砂災害警戒区域は、それぞれ別の観点から確認する必要があります。
高低差は必ずしもマイナスではない
ここまで注意点を多く説明しましたが、高低差があること自体が不動産としての欠点とは限りません。
例えば南側へ下がるひな壇住宅地では、前面建物との高低差によって日照や眺望を確保しやすい場合があります。
道路より宅地が高ければ、歩行者から室内が見えにくく、プライバシー性が高まることもあります。
一方で、毎日の階段移動、駐車場から玄関までの高低差、高齢になったときの生活動線などを気にする買主もいます。
つまり、同じ高低差でも買主によって評価は異なります。
査定価格は「擁壁があるから○%減」では決められない
不動産査定で注意したいのは、擁壁があるという理由だけで一律に価格を下げることです。
実際には、
・擁壁の高さ
・構造
・施工年代
・許認可資料の有無
・劣化状況
・敷地形状
・道路との高低差
・駐車場の配置
・建替え時の利用可能性
・日照や眺望
・駅距離
・周辺の成約事例
などを総合的に判断する必要があります。
同じ八王子市内、同じ最寄駅、同じ土地面積であっても、擁壁の状態や造成条件が違えば土地としての評価は変わります。
売却前に準備しておきたい資料
高低差のある土地を売却するときは、可能であれば次の資料を整理しておくと買主への説明がしやすくなります。
・土地の測量図
・境界確認書
・建築確認関係書類
・造成関係図面
・開発許可関係資料
・宅地造成関係資料
・擁壁の構造図
・過去の補修工事資料
・購入時の重要事項説明書
・過去の売買契約書
すべて揃っていなくても売却できないわけではありません。
重要なのは、「何が確認できていて、何が確認できていないのか」を整理することです。
売買契約では断定しすぎない
不動産取引では、売主が知っている事実を適切に買主へ伝えることが重要です。
擁壁について過去に補修を行った、亀裂が発生したことがある、隣地と擁壁について協議したことがある、といった事実があれば、売却時に整理しておく必要があります。
一方で、専門的な調査を行っていないのに「この擁壁は絶対に安全です」「建替えでもそのまま使えます」と断定することも適切ではありません。
高低差のある土地ほど、確認済みの事実と専門家による判断が必要な事項を分けて説明することが大切です。
八王子のひな壇住宅地は「土地の履歴」を調べることが重要
ひな壇住宅地の売却では、現在の土地を見るだけでは十分ではありません。
もともとどのような地形だったのか。
いつ頃造成されたのか。
切土なのか盛土なのか。
擁壁はいつ造られたのか。
どのような許認可を受けているのか。
排水はどのように処理されているのか。
将来建替える場合にどのような制約が考えられるのか。
こうした土地の履歴を一つずつ調査することで、初めてその土地の特徴が見えてきます。
八王子市の高低差のある土地は、平坦地とは異なる確認事項があります。
しかし、適切に調査して買主へ説明できれば、高低差のメリットも含めて土地の特徴を正しく評価してもらうことができます。
「擁壁があるから売れない」「高低差があるから価値が低い」と単純に考えるのではなく、道路・境界・造成・擁壁・排水・建築可能性まで総合的に調査したうえで売却を進めることが重要です。
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本ブログ監修者

株式会社cocoro不動産 代表取締役
★柴田祐介(しばた ゆうすけ)1981年生まれ。
大手不動産会社にて、八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
宅地建物取引士/二級建築士/2級FP技能士/相続アドバイザー二級/秘書検定2級/既存住宅状況調査技術者