八王子の角地は本当に建ぺい率が緩和される?角地緩和の条件とは
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「角地は建ぺい率が10%緩和される」
不動産の売買や建築の場面では、よく聞く話です。
たしかに建築基準法には、一定の角地について建ぺい率を緩和する制度があります。
しかし、ここで非常に重要なのが、
道路が2方向に接しているからといって、すべての土地が角地緩和を受けられるわけではない
という点です。
特に八王子市では、建築基準法だけでなく「八王子市建築基準法施行細則」に具体的な条件が定められています。
土地を売却するときに「角地なので建ぺい率が10%増えます」と安易に説明してしまうと、買主が建築計画を進めた段階で「実は角地緩和が使えなかった」という問題につながる可能性があります。
今回は、八王子市における角地緩和について、不動産売却の実務も含めて詳しく解説します。
そもそも建ぺい率とは?
建ぺい率とは、
敷地面積に対する建築面積の割合
です。
たとえば敷地面積100㎡、建ぺい率40%であれば、原則として建築面積は40㎡までです。
建ぺい率60%であれば60㎡までとなります。
ここで角地緩和が適用されると、建築基準法第53条第3項の規定により、一定の場合に建ぺい率の上限へ「10分の1」が加算されます。
国土交通省も、特定行政庁が指定する街区の角にある敷地について、建ぺい率を10%緩和する制度として整理しています。
「10%緩和」の意味を間違えないこと
ここも意外に誤解されやすい部分です。
建ぺい率60%の10%増しだから、
60%×1.1=66%
になるわけではありません。
角地緩和では原則として、
60% → 70%
というように10ポイント加算されます。
同様に、
建ぺい率40% → 50%
建ぺい率50% → 60%
建ぺい率60% → 70%
という考え方になります。
土地面積が100㎡であれば、建ぺい率60%と70%では建築面積に10㎡の差が出るため、住宅の間取りや駐車スペースの計画にも影響することがあります。
八王子市では「角地なら全部OK」ではない
八王子市では、建築基準法第53条第3項第2号に基づき、角地緩和の対象となる敷地を「八王子市建築基準法施行細則第21条」で定めています。
まず共通条件として、
敷地の周辺の3分の1以上が、道路・公園・広場・川その他これらに類するものに接していること
が必要です。
そのうえで、次のいずれかに該当する必要があります。
条件① 2つの道路が120度未満で交わる角地
一般的にイメージする「角地」がこれです。
2つの道路が交差する場所にあり、その道路が作る隅角が、
120度未満
であることが条件です。
つまり、道路が2方向に接していても、交差する角度が大きすぎる場合には対象にならない可能性があります。
ほぼ一直線に近い形で2本の道路に接しているような土地を、単純に「二方道路だから角地緩和」と判断することはできません。
さらに先ほどの、
敷地外周の3分の1以上が道路等に接していること
という条件も同時に満たす必要があります。
条件② 角地ではなくても対象になる場合がある
八王子市の角地緩和で興味深いのがこの規定です。
八王子市では、
それぞれ幅員8m以上の2つの道路の間にある敷地で、道路境界線相互の間隔が35mを超えないもの
も対象としています。
つまり、道路が交差する本来の意味での「角地」ではなくても、条件を満たした二方道路の土地などが角地と同様に扱われることがあります。
これは一般の方が登記簿、公図、現地だけを見て判断するのは難しい部分です。
条件③ 公園・広場・川などに接している土地
八王子市では、公園等に接している敷地についても一定の場合に角地緩和の対象となります。
対象となる可能性があるのは、
・公園等に直接接している敷地
・前面道路の反対側に公園等がある敷地
などです。
ただし、公園に接していれば自動的に適用されるという意味ではありません。
八王子市の規定では、先ほどの①または②に準ずる敷地であることが必要とされています。
「公道か私道か」だけでは判断できない
土地売却の調査で重要なのは、道路の所有者だけではありません。
「市道だから大丈夫」
「私道だからダメ」
という単純な話ではありません。
確認しなければならないのは、
建築基準法上どのような道路として扱われているのか
という点です。
建築基準法第42条には、道路について複数の種類が定められています。
たとえば、
・道路法による道路
・開発許可によって築造された道路
・位置指定道路
・建築基準法第42条第2項道路
などがあります。
土地の現地調査だけでなく、八王子市役所などで建築基準法上の道路種別を確認することが重要です。
特に注意したい「2項道路」
八王子市の角地緩和では、建築基準法第42条第2項道路について特に注意が必要です。
いわゆる2項道路は、道路中心線から原則2m後退した位置などが道路境界線とみなされます。
いわゆる「セットバック」です。
そして八王子市の角地緩和基準では、2項道路について、道路境界線とみなされる線と現況の道との間の敷地部分を道路として築造しないものは、対象となる道路から除かれています。
つまり、
「道路台帳を見ると2本とも道路だから角地緩和」
と簡単に判断できない場合があります。
2項道路の後退部分が実際にどのような状態になっているかまで確認する必要がある
ということです。
これは八王子市で土地を売却する際、非常に重要な実務上のポイントです。
セットバックがあると、土地面積の計算にも注意
もう一つ注意したいのが、セットバック部分です。
たとえば登記簿上の土地面積が100㎡でも、2項道路によって5㎡を道路として後退しなければならない場合、建築計画上その5㎡を通常の宅地部分と同じように利用できるわけではありません。
そのため、
「100㎡×建ぺい率70%=70㎡建築できる」
とは限りません。
仮に建築上の有効敷地面積が95㎡になれば、
95㎡×70%=66.5㎡
という計算になります。
角地緩和だけを見るのではなく、
道路後退後の有効宅地面積とセットで確認する
ことが重要です。
角地緩和と「隅切り」は別の話
角地を売却するときに、もう一つ確認しておきたいのが「隅切り」です。
八王子市公式ホームページでも、角地緩和と併せて隅切りについて案内されています。
東京都建築安全条例第2条では、原則として、
幅員がそれぞれ6m未満の道路が交わる角敷地
について、一定の場合に敷地の角を道路状に整備することを求めています。
隅角が120度以上の場合などは除かれます。
対象となる場合、敷地の隅に長さ2mの底辺を持つ二等辺三角形状の部分を道路状に整備することになります。
ここで重要なのは、
角地緩和と隅切りは同じ制度ではない
ということです。
角地だから建ぺい率が増える一方で、隅切りによって実際に自由に利用できる敷地形状が変わることもあります。
したがって土地の価値や建築可能なボリュームを判断するときは、両方を確認する必要があります。
角地緩和は「容積率」が10%増える制度ではない
これも非常に多い誤解です。
角地緩和によって基本的に緩和されるのは、
建ぺい率
です。
容積率が、
100% → 110%
200% → 210%
になる制度ではありません。
容積率については、
・用途地域による指定容積率
・前面道路幅員による容積率制限
・地区計画
・その他の建築規制
などを別に確認する必要があります。
したがって、
「角地だから大きな建物が建つ」
とも一概には言えません。
建ぺい率に余裕があっても、容積率、高度地区、道路斜線、北側斜線、日影規制などによって建築できるボリュームが制限される可能性があります。
防火地域・準防火地域では、さらに建ぺい率が緩和される場合もある
さらに専門的な話になりますが、建築基準法第53条には防火性能の高い建築物についての建ぺい率緩和もあります。
国土交通省の資料では、
・防火地域内の一定の耐火建築物等
・準防火地域内の一定の耐火建築物・準耐火建築物等
について建ぺい率を10%緩和する制度があり、
さらに角地緩和にも該当する場合には、条件によって合計20%の緩和となるケースも整理されています。
たとえば指定建ぺい率60%の土地について、
角地緩和 +10%
防火関係の緩和 +10%
の両方に該当すれば、建築基準法上80%となる可能性があります。
ただし、防火地域・準防火地域の指定だけで自動的に緩和されるわけではなく、建築物そのものの構造・防火性能について条件を満たす必要があります。
土地売却時には、現在建っている建物ではなく、
買主が将来どのような建物を建築するのかによって適用関係が変わる場合がある
ことにも注意が必要です。
八王子市の「風致地区」は別途確認が必要
八王子市には多摩陵風致地区があります。
風致地区では、一般的な用途地域による建ぺい率だけでなく、良好な自然環境や景観を守るための独自の基準があります。
八王子市によると、多摩陵風致地区では建築物の建ぺい率について40%以下などの許可基準があり、一定の条件を満たした場合には緑化を条件とした緩和制度も設けられています。
その条件の一つとして、建築基準法第53条第3項第2号の角地に該当する場合も規定されています。
つまり、
「用途地域上は角地緩和で50%だから50%建てられる」
と単純に判断できない土地もあります。
建築基準法とは別の条例・地区計画・風致地区等の規制がある土地では、それぞれ確認が必要です。
建築確認済証に「角地緩和」が使われていても安心とは限らない
中古住宅の売却では、既存建物の建築確認概要書などを確認すると、角地緩和を前提として建築されている場合があります。
これは重要な資料ですが、
「昔の建物が角地緩和を受けているから、将来も必ず同じ条件で建替えられる」
とは限りません。
たとえば、
・道路の扱い
・セットバック状況
・敷地分割
・敷地境界
・都市計画
・地区計画
・建築関係条例
などについて、建築当時と現在で状況が異なる可能性があります。
土地・戸建を売却する場合には、
現在の法令・現在の敷地・現在の道路状況で再確認する
ことが重要です。
角地だから必ず土地価格が高くなるわけではない
角地は一般的に、
・開放感がある
・日当たりを確保しやすい
・間取りの自由度が高い
・車庫配置の選択肢が増える
・建ぺい率緩和を受けられる可能性がある
といったメリットがあります。
そのため、同じ住宅地の中では評価が高くなるケースもあります。
一方で、
・車や歩行者からの視線
・道路騒音
・外構工事費
・道路斜線
・隅切り
・セットバック
・高低差
などがデメリットになる場合もあります。
したがって査定では、単純に「角地だから〇%プラス」と機械的に判断するのではなく、
実際に建築上どのようなメリットがある角地なのか
を調査することが重要です。
土地売却前に確認しておきたい資料
八王子市で角地を売却する場合には、少なくとも次のような資料を確認しておくと安心です。
・公図
・全部事項証明書
・地積測量図
・確定測量図
・八王子市の道路資料
・建築基準法上の道路種別
・道路幅員
・セットバックの有無
・建築確認概要書
・用途地域
・建ぺい率・容積率
・防火地域・準防火地域
・地区計画
・風致地区等の指定
特に売地の場合、買主は購入後に建物を建てることが多いため、
「現在建物が建っているか」
だけではなく、
将来どの程度の建物を再建築できる土地なのか
が重要になります。
不動産広告で「角地」と書く場合も慎重に
不動産売却では、
「南西角地」
「開放感のある角地」
「角地につき建ぺい率緩和あり」
といった表現を使うことがあります。
しかし、
「角地であること」と「建築基準法上の角地緩和を受けられること」は別問題
です。
現地を見ると明らかな角地であっても、八王子市の基準を満たしていなければ、建ぺい率緩和の対象にならない可能性があります。
そのため、
「角地につき建ぺい率10%緩和」
と広告や販売資料へ記載する場合には、事前に行政調査を行うことが重要です。
八王子市では役所調査が非常に重要
八王子市には、
・古くからの住宅地
・開発分譲地
・位置指定道路
・2項道路
・私道
・高低差のある造成地
など、さまざまな道路・土地があります。
同じ「角地」に見えても、法的な扱いが異なるケースは珍しくありません。
特に2項道路や古い分譲地では、
現況だけで判断せず、道路種別・道路境界・セットバック・隅切りまで確認する
ことが重要です。
八王子市の公式情報でも、角地緩和については建築指導課が問い合わせ先として案内されています。
まとめ|八王子の角地は「2方向道路=建ぺい率緩和」ではない
八王子市では、一定の角地について建ぺい率を10%緩和する制度があります。
ただし、単純に2本の道路へ接しているだけでは足りません。
重要なのは、
①敷地周辺の3分の1以上が道路・公園等に接していること
に加えて、
②2つの道路が120度未満で交わる角地であること
など、八王子市が定める条件を満たしているかどうかです。
また、
2項道路
セットバック
隅切り
防火地域・準防火地域
地区計画
風致地区
容積率
斜線制限
なども建築計画に影響します。
土地売却において本当に重要なのは、
「角地です」と説明することではなく、「この土地では実際にどの程度の建物を建てられるのか」を正確に調査すること
です。
角地緩和の有無は、土地の利用価値だけでなく、売却価格や買主の建築計画にも影響することがあります。
八王子市内で角地の土地や戸建を売却する場合には、売却活動を始める前に道路と建築規制を確認しておくことをおすすめします。
【参考】
八王子市「角敷地における建蔽率の緩和(角地緩和)、隅切りについて」
八王子市公式ページを確認する
国土交通省「建築基準法(集団規定)・建蔽率制限の特例」
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【本ブログ監修者】

★柴田祐介(しばた ゆうすけ)1981年生まれ。
大手不動産会社にて八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
在職期間中には建築・デザイン専門学校で建築についても学び、現在は株式会社cocoro不動産にて八王子市を中心に不動産売却・相続不動産・空き家売却などの相談に対応。
【保有資格】宅地建物取引士、二級建築士、2級FP技能士、相続アドバイザー二級、秘書検定2級、既存住宅状況調査技術者