備蓄倉庫と床面積
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建築図面に「備蓄倉庫」と記載された小さな収納スペースを見かけることがあります。
一般的な物入れと同じように見えますが、建築基準法上は、容積率の算定に関係する重要な意味を持っています。
備蓄倉庫は床面積に入らないのか
最初に理解しておきたいのは、備蓄倉庫が完全に「床面積に算入されない」わけではないという点です。
壁などで囲まれた備蓄倉庫は、原則として建築基準法上の床面積に算入されます。
ただし、一定の条件を満たす部分については、容積率を計算する際の延べ面積から除外できる仕組みがあります。
つまり、通常の延べ面積には含まれるものの、「容積率算定上の延べ面積」からは一定範囲まで不算入にできるということです。
建築基準法施行令第2条第1項第4号および同条第3項に基づく、容積率の緩和規定になります。
対象となるのは「専ら防災のため」の倉庫
容積率の緩和を受けられるのは、単なる収納や物置ではありません。
国土交通省の技術的助言では、非常用食糧や応急救助物資などを備蓄するための「防災専用の倉庫」であり、利用者から見えやすい位置に、備蓄倉庫である旨の表示がされているものとされています。
また、原則として壁で囲まれた専用室であることも必要です。
一戸建て住宅に限らず、共同住宅、事務所、店舗など、建築物の用途を問わず適用できる制度です。
扉に「防災備蓄倉庫」と表示していても、実際には掃除機、衣類、日用品、季節用品などを保管している場合、制度の対象として認められない可能性があります。
日常使用する用品の収納を兼ねている場合には、容積率算定上の床面積に算入するという取扱いを明示している行政庁もあります。
不算入にできるのは全体の50分の1まで
備蓄倉庫部分について、容積率算定上の延べ面積から除外できる上限は、敷地内の建築物の各階の床面積の合計の50分の1です。
割合にすると2%になります。
例えば、各階の床面積の合計が100平方メートルあり、そのうち備蓄倉庫が3平方メートルある場合、不算入にできる上限は次のとおりです。
100平方メートル×50分の1=2平方メートル
したがって、3平方メートルすべてを除外できるわけではなく、2平方メートルまでが不算入となり、残りの1平方メートルは容積率算定上の延べ面積に含まれます。
この場合、容積率算定上の延べ面積は98平方メートルです。
備蓄倉庫が1.5平方メートルであれば、上限の2平方メートル以内であるため、1.5平方メートル全体を不算入にできます。
建蔽率や登記面積まで減るわけではない
備蓄倉庫の緩和は、あくまで容積率算定上の延べ面積に関する制度です。
備蓄倉庫部分が建築面積から除外され、建蔽率まで緩和される制度ではありません。
また、建築確認申請、建物登記、固定資産税、構造計算、防火・避難規定などで使用される床面積について、すべて一律に除外されるわけでもありません。
建築確認申請書には、通常の延べ面積と、容積率算定上の不算入部分を反映した延べ面積を区別して記載します。
不動産広告の建物面積、確認済証の延べ面積、容積率算定上の延べ面積、登記簿上の床面積が一致しないことがあるため、数字だけで違法建築と判断してはいけません。
普通の収納に変更するとどうなるのか
備蓄倉庫として容積率の緩和を受けて建築された部分を、完成後に通常の物入れやクローゼットとして使用すると、緩和の前提が失われる可能性があります。
その面積を容積率に算入し直した結果、指定容積率を超える場合には、違反建築物となる可能性があります。
国土交通省の技術的助言でも、建築後の転用を防止するため、行政庁が報告を求めたり、立入検査を行ったりすることが想定されています。
特に、玄関脇、寝室、子ども部屋などに設けられた一般的なクローゼットに近い形状の場合、本当に防災専用なのかを慎重に確認する必要があります。
売買契約書や重要事項説明書に「備蓄倉庫として使用してください」と記載するだけでは、建築基準法上の適法性を維持する方法として十分とは限りません。
不動産売買で確認する資料
中古住宅を売買する際、間取り図に備蓄倉庫の表示がある場合には、確認済証、検査済証、建築確認申請書、建築計画概要書、設計図面を確認します。
そのうえで、備蓄倉庫の位置と面積、容積率不算入面積、扉の表示、現在の利用状況を現地で確認します。
特に指定容積率の上限近くまで建築されている住宅では、備蓄倉庫の取扱いが適法性に直接影響することがあります。
「小さな収納だから問題ない」と判断せず、建築士や特定行政庁、指定確認検査機関への確認が必要です。
Q&A
Q.非常食と日用品を一緒に収納してもよいですか。
防災専用の倉庫であることが条件のため、日常的に使用する衣類、掃除用品、生活用品などとの兼用は避ける必要があります。
非常食、飲料水、簡易トイレ、防災用品、応急救助用品など、防災目的の物品を保管する場所として使用します。
Q.扉に「備蓄倉庫」と書けば認められますか。
表示だけで自動的に認められるわけではありません。
壁で囲まれた専用室であること、位置や形状が通常の収納への転用を前提としていないこと、実際に防災専用として使用されていることなどを総合的に判断されます。
Q.すべての新築住宅に備蓄倉庫がありますか。
すべての住宅に設置されているわけではありません。
容積率に余裕がない住宅や狭小地の住宅などで、居住部分を確保するために採用されることがあります。
まとめ
備蓄倉庫は、床面積そのものから完全に消えるスペースではありません。
一定の条件を満たす場合に限り、建物全体の床面積の50分の1を上限として、容積率算定上の延べ面積から不算入にできる制度です。
防災専用であること、壁で囲まれた専用室であること、見やすい表示があること、実際の使用方法が適切であることが重要になります。
中古住宅の購入や売却では、図面上の表記だけでなく、建築確認資料と現在の利用状況を照合し、適法性を確認することが大切です。
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【本ブログ監修者】

株式会社cocoro不動産 代表取締役
★柴田祐介(しばた ゆうすけ)
1981年生まれ
大手不動産会社にて、八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。
【保有資格】宅地建物取引士、二級建築士、2級FP技能士、秘書検定2級、既存住宅状況調査技術者、相続アドバイザー2級