八王子不動産売買専門の株式会社cocoro不動産の柴田のブログです。

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二段擁壁・増し積み擁壁について|見た目では分からない安全性と不動産売買での注意点

高低差のある住宅地では、敷地を平らに利用するために「擁壁」が設けられていることがあります。

なかでも不動産売買の際に特に慎重な確認が必要になるのが、**「二段擁壁」と「増し積み擁壁」**です。

一般の方から見ると、「コンクリートや石でできているから大丈夫そう」「何十年も問題なく使われているから安全だろう」と思われがちですが、擁壁の安全性は外観だけでは判断できません。

国土交通省の資料でも、増し積み擁壁や二段擁壁は、通常の鉄筋コンクリート擁壁等とは区別して注意すべき擁壁として取り扱われています。特に増し積み擁壁については、東日本大震災や熊本地震などで被害が確認されています。

【参考】国土交通省「宅地擁壁について」
国土交通省「宅地擁壁について」

今回は、二段擁壁・増し積み擁壁とはどのようなものなのか、安全性をどのように考えるのか、さらに不動産を売却するときにどこまで調査すべきなのかを専門的に解説します。

二段擁壁とは?

二段擁壁とは、簡単にいうと、上下に近接して二つの擁壁が設置されている状態です。

たとえば道路側に高さ1.5mの擁壁があり、その奥側の高い位置にさらに1.5mの擁壁があるようなケースです。

ここで重要なのは、

「擁壁が二つあるから二段擁壁」

という単純な話ではないことです。

上段擁壁と下段擁壁が十分に離れており、それぞれが独立した擁壁として安全性を確保できていれば、構造上問題のある「二段擁壁」として扱われない場合があります。

逆に、上段擁壁が下段擁壁に近すぎると、上段擁壁やその背面土の荷重が下段擁壁に影響し、下段擁壁が当初想定していた以上の力を受けることになります。

八王子市の現在の盛土規制法に関する設計基準では、上部・下部擁壁を近接して設置する場合について、土質に応じた角度とともに、原則として**「0.4H以上かつ1.5m以上」**の離隔が一つの判断基準として示されています。

この条件を満たさないなど二段擁壁として扱われる場合には、上部擁壁の根入れを深くしたり、杭基礎を採用したりするなど、下部擁壁に設計以上の荷重が作用しないための対策が求められています。

したがって、

「上下それぞれ2m以下だから問題ない」

とは限らないところが非常に重要です。

「安息角30度を見ればよい」とも限らない

二段擁壁について調べると、「30度のライン」「安息角」という説明を見かけることがあります。

確かに従来から、擁壁同士の影響を考える際に30度のラインを用いる考え方があります。

しかし、実際の行政基準では一律30度ではなく、地盤の土質によって考慮する角度が異なる場合があります。

八王子市の現在の基準でも、軟岩、砂利・関東ローム等、盛土などによって角度が分けられています。

したがって既存擁壁について、

「30度ラインから外れているから絶対安全」

と現地だけを見て判断するのは適切ではありません。

擁壁の種類、高さ、根入れ、底版、背面土、地盤条件、造成時期などを含めて確認する必要があります。

増し積み擁壁とは?

増し積み擁壁とは、もともと存在していた擁壁の上部に、後からブロックや別の擁壁を継ぎ足し、その背面まで土を入れて宅地を高くしたものです。

典型的なのが、

「古い間知石擁壁の上にコンクリートブロックを数段積み、その高さまで土を入れて庭を広げている」

という状態です。

注意したいのは、擁壁の上にブロックがあるだけでは必ずしも増し積み擁壁ではないことです。

ブロックの裏側まで土が入っておらず、単なる転落防止用の塀として設置されているのであれば、擁壁ではなく「塀」と判断される可能性があります。

反対に、ブロックの裏まで土が入っている場合、そのブロック部分にも土圧が作用するため、増し積み擁壁として安全性を検討する必要が出てきます。

東京都も、既存擁壁の上のコンクリートブロックについて、背後まで土が盛られている場合には増し積み擁壁と考える旨を案内しています。

なぜ増し積み擁壁は問題になりやすいのか

最大の問題は、下側の既存擁壁が、増し積み後の土圧を前提に設計されているとは限らないことです。

たとえば当初1.5mの高さを支えるために設計された擁壁の上に、後から1mのブロックを設置して背面に土を入れた場合、単純に「ブロックを1m高くしただけ」ではありません。

背面土の量が増えます。

擁壁に作用する土圧も変わります。

さらに建物、自動車、物置などの上載荷重や、地震時の水平力まで考慮しなければならない場合があります。

国土交通省も増し積み擁壁について、適切に一体構造として計画されたものを除き、追加される土圧等によって構造的に不安定となり、被害が大きくなった事例が多く確認されているとしています。

つまり、

「下の石積みは頑丈だから、その上に数段ブロックを積んでも大丈夫」

という考え方は構造上成り立たない可能性があります。

二段擁壁と増し積み擁壁の違い

両者は似ていますが、構造的には少し違います。

増し積み擁壁は、基本的には既存擁壁の上部に別の土留めを継ぎ足す形です。

これに対して二段擁壁は、上下の擁壁の間に一定の水平距離があり、段状になっているケースを含みます。

ただし二段擁壁でも、上下の擁壁が近接していれば、上段擁壁の荷重が下段擁壁へ影響します。

結局どちらも重要なのは、

「上側の土・擁壁・建物などの荷重を、下側の擁壁がどのように受ける構造になっているか」

です。

見た目の名称だけで安全性を判断することはできません。

「不適格擁壁」と「違法な擁壁」は同じではない

ここは不動産売買で特に誤解されやすいところです。

国土交通省の擁壁に関するマニュアルでは、増し積み擁壁や二段擁壁などを、一般的な技術基準に適合する擁壁とは分けて評価しています。

しかし、

「現在の技術基準に適合していることを確認できない」ことと、「違法に造られた擁壁」であることは必ずしも同じではありません。

擁壁が造られた時期や当時の法令、許可対象であったか、造成工事の内容などによって法的な位置付けは異なります。

古い住宅地の場合、

造成時期が非常に古い
当時の図面が残っていない
宅地造成の許可記録が確認できない
工作物確認の記録がない
所有者自身も擁壁の築造時期を知らない

といったケースも珍しくありません。

したがって実務では、

「違法擁壁です」

と即断するのではなく、

「現行基準への適合性を確認できない既存擁壁」

として調査を進めることが重要です。

高さ2m以下なら安全確認は不要?

これも非常に多い誤解です。

建築基準法上、原則として地盤面からの高さが2mを超える擁壁については、工作物として建築確認が必要になる場合があります。東京都も同様の案内をしています。

しかし、

「2m以下=安全性を確認しなくてよい」

という意味ではありません。

高さ1.8mの古い石積み擁壁でも、傾き、孕み、亀裂、排水不良などがあれば問題になります。

さらに、

下段1.5m+上段1.5m

という二段擁壁であれば、それぞれ単独では2m以下であっても、宅地全体としては約3mの高低差を支えていることになります。

確認申請が必要かどうかという「行政手続」と、構造的に安全かどうかという「安全性」は分けて考えなければなりません。

既存擁壁で現地確認したいポイント

売買対象地に二段擁壁・増し積み擁壁がある場合、少なくとも次の事項を確認します。

  • 擁壁の種類と高さ、延長
  • 上段・下段擁壁の水平距離
  • 擁壁背面まで土が入っているか
  • 擁壁の傾斜・孕み・亀裂・目地の開き
  • 水抜き穴の有無と排水状況
  • 擁壁上部の沈下や地割れ
  • 擁壁近くに建物・駐車場・物置等があるか
  • 建築確認・工作物確認・造成許可・検査済証等の有無
  • 当初図面や構造計算書が残っているか
  • 隣地との高低差と擁壁の所有者

国土交通省も、擁壁の健全度について、擁壁そのものだけではなく排水施設や周辺地盤などを含めて総合的に評価する考え方を示しています。

八王子市では盛土規制法にも注意

八王子市では、令和6年(2024年)7月31日から**市内全域が「宅地造成等工事規制区域」**に指定されています。

そのため現在、新たに一定規模以上の盛土・切土・擁壁工事等を行う場合には、盛土規制法に基づく許可が必要となる可能性があります。

【参考】八王子市「宅地造成及び特定盛土等規制法について」
八王子市「宅地造成及び特定盛土等規制法について」

また、八王子市では盛土規制法に関する独自の審査基準・手引も公開されており、2026年4月にも改訂されています。

したがって既存擁壁を造り替える場合、

「昔と同じ形に戻せばよい」

とは限りません。

現在の法令・技術基準に合わせて計画し直す必要が生じる可能性があります。

建替えのときに初めて問題が表面化するケースも

二段擁壁・増し積み擁壁がある中古住宅では、現在建物が建っているからといって、

「将来も同じように建替えできる」

とは限りません。

既存建物が建築された当時には問題にならなかった擁壁でも、建替え時の建築確認では既存擁壁の安全性について説明を求められる場合があります。

安全性が確認できなければ、

擁壁を造り替える
建物を擁壁から離す
深基礎にする
杭等によって荷重を安全な地盤へ伝える
建築物の配置を変更する

などの対応を検討することになります。

そのため購入者にとっては、「現在住めるか」だけではなく、将来の建替え可能性まで含めて評価する必要がある土地ということになります。

二段擁壁・増し積み擁壁は住宅ローンにも影響する?

必ず住宅ローンが利用できなくなるわけではありません。

ただし金融機関や保証会社によっては、擁壁の状態や再建築時の問題、担保評価などについて追加確認が行われる場合があります。

特に、

許可・検査資料がない
明らかな増し積みがある
大きな亀裂や孕みがある
建物が擁壁際に建っている
将来の建替え条件が不明

といった物件では、買主側の金融機関から調査を求められる可能性があります。

売却活動を開始してから問題が発覚すると契約条件や価格交渉に影響するため、売主側で先に擁壁の状況を整理しておくことが重要です。

売却前に調査しておきたい資料

まず役所で、

造成許可
開発許可
検査済証
工作物確認
建築確認概要書
造成時の図面

などの有無を確認します。

さらに売主が保管している測量図、造成図、構造計算書、過去の工事資料なども探します。

ただし、

「検査済証がない=危険」でもなければ、「検査済証がある=現在も絶対安全」でもありません。

行政資料は「築造当時どのような手続きで造られたか」を確認する資料です。

現在の物理的な安全性については、現地状況や劣化状態も含めて別途判断する必要があります。

売却できないわけではありません

二段擁壁や増し積み擁壁があるからといって、不動産そのものが売却できないわけではありません。

重要なのは、

分からない状態のまま販売しないことです。

売主側で事前に、

擁壁の形状
高さ
所有関係
行政資料
許可・検査記録
目視できる劣化
建替え時に想定される制約

などを整理しておけば、買主にも具体的な説明ができます。

逆に「昔からこうなっているので大丈夫だと思います」という説明だけで契約を進めることは、不動産取引としては好ましくありません。

擁壁は補修や造り替えになると工事規模が大きくなることがあるため、購入判断に重要な影響を与える事項だからです。

Q&A|二段擁壁・増し積み擁壁についてよくある質問

Q. 擁壁の上にブロックが積んであります。全部「増し積み擁壁」ですか?

いいえ。

ブロックの背面まで土が入っているかが重要です。

土を支えていれば増し積み擁壁として検討する必要がありますが、背面に土がなく単なる塀として設置されている場合は、基本的には別の扱いになります。

Q. 二段擁壁は違法なのでしょうか?

二段になっていることだけで直ちに違法とは判断できません。

上下擁壁の位置関係、構造、造成時期、許可内容等を確認する必要があります。

適切に構造検討された二段擁壁もあります。

Q. 高さ2m以下なら問題ありませんか?

そうとは限りません。

2mという数字は工作物確認等の手続上重要ですが、安全性そのものを区切る数字ではありません。

特に二段擁壁では上下を含めた荷重関係を確認する必要があります。

Q. 古い擁壁の図面がありません。売却できますか?

売却自体は可能です。

ただし「安全性を確認できる資料が存在しない」という事実も含め、現況を整理して買主へ説明する必要があります。

必要に応じて建築士や擁壁・地盤の専門家へ調査を依頼します。

Q. 擁壁を補修すれば安全になりますか?

内容によります。

表面のひび割れをモルタル等で補修しただけでは、擁壁全体の滑動・転倒・支持力・土圧等に対する安全性が改善するとは限りません。

構造上の問題なのか、単なる表面劣化なのかを先に判断することが重要です。

まとめ|擁壁は「高さ」より「構造の成り立ち」を見る

二段擁壁・増し積み擁壁で最も重要なのは、見た目ではありません。

いつ、どのような設計で造られ、現在どの荷重を受けているか。

ここを確認する必要があります。

特に増し積み擁壁は、後から宅地を広く使うために手を加えられているケースがあり、下部擁壁が現在の荷重を想定して設計されていない可能性があります。

また二段擁壁についても、上下の擁壁が十分に離れているのか、上段の荷重が下段へ作用する位置関係なのかによって評価が大きく変わります。

不動産売買では、

「擁壁がある」ことよりも、「その擁壁についてどこまで調査され、何が分かっていて、何が分からないのか」を明確にすることが重要です。

八王子市は丘陵地や造成住宅地も多いため、擁壁が売却価格や建替え計画に大きな影響を与えるケースがあります。

擁壁のある不動産を売却する際は、販売開始前の段階で行政資料と現地状況を確認し、必要に応じて建築士等の専門家と連携しながら進めることをおすすめします。

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【本ブログ監修者】

株式会社cocoro不動産 代表取締役

★柴田祐介(しばた ゆうすけ)1981年生まれ

大手不動産会社にて、八王子・町田・新百合ヶ丘など多摩地区を中心に約17年間、不動産売買仲介業務に従事。

【保有資格】宅地建物取引士/二級建築士/2級FP技能士/相続アドバイザー二級/秘書検定2級/既存住宅状況調査技術者

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