親の家を売るタイミングはいつが良い?
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親が住んでいた家をどうするかは、単に「高く売れる時期」を考えればよい問題ではありません。
相続、税金、空き家管理、認知症、兄弟姉妹との話し合い、建物の老朽化、近隣対応など、複数の要素が絡みます。
特に実家の場合、「まだ思い出があるから」「いずれ使うかもしれないから」と判断を先延ばしにしているうちに、建物の傷みが進んだり、草木の管理が負担になったり、相続人間で意見がまとまりにくくなることがあります。
結論から言えば、親の家を売るタイミングは、親が住まなくなった直後、または相続後できるだけ早い段階で方向性を決めることが重要です。
ただし、すぐ売ればよいという意味ではありません。売却するか、貸すか、残すかを判断するための情報整理を早めに始めることが大切です。
まず考えるべきは「親が存命中か、相続後か」
親の家の売却は、大きく分けて2つの場面があります。
1つ目は、親が存命中に売るケースです。
たとえば、親が高齢者施設へ入居した、子どもと同居することになった、自宅に戻る可能性が低いといった場合です。この場合、所有者である親本人の意思確認が重要になります。売買契約は原則として所有者本人が行うため、親の判断能力がしっかりしているうちに、売却や管理方針について話し合っておくことが大切です。
2つ目は、相続後に売るケースです。
親が亡くなった後に売却する場合、相続人の確定、遺産分割協議、相続登記、売却活動という流れになります。2024年4月1日から相続登記は義務化されており、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
つまり、相続後の実家は「そのうち考えよう」ではなく、法律上も早めに整理すべき財産になっています。
親が施設に入ったタイミングは重要な分岐点
親が施設に入った場合、「また戻ってくるかもしれない」という気持ちから、家をそのままにするご家庭は少なくありません。
もちろん、親の意向や健康状態によっては、すぐに売却するべきではないケースもあります。
しかし、実務上はこのタイミングで一度、家の方向性を整理しておくことをおすすめします。
理由は、空き家になった家は想像以上に傷みが早いからです。
人が住まなくなると、換気不足、湿気、雨漏りの発見遅れ、給排水管の劣化、庭木の越境、害虫・小動物の侵入などが起こりやすくなります。
また、親の判断能力が低下してから売却を進めようとすると、本人確認や意思確認の面で手続きが難しくなる可能性があります。したがって、施設入居の段階では、少なくとも次の点を確認しておくべきです。
・将来的に自宅へ戻る可能性があるか
・施設費用や生活費に売却代金を充てる必要があるか
・家を維持する費用を誰が負担するか
・子どもの誰かが住む予定はあるか
・売却する場合、親本人がその意思を持っているか
この段階で結論が出なくても構いません。大切なのは、問題を放置しないことです。
相続後に売るなら「10か月以内」に一度判断する
親が亡くなった後に実家を売るかどうかは、相続税の申告期限との関係も考える必要があります。
相続税の申告・納税は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
相続税がかかる可能性がある場合、実家を売るかどうかは、納税資金や遺産分割にも影響します。
たとえば、相続財産の多くが不動産で、預貯金が少ない場合、相続税を現金で納めるために不動産売却を検討しなければならないことがあります。
また、兄弟姉妹で相続する場合、誰か1人が家を取得するのか、売却して現金で分けるのかによって、遺産分割協議の内容が大きく変わります。
そのため、相続後は少なくとも10か月以内に、
・相続税がかかるか
・誰が実家を相続するか
・売却するのか、残すのか
・売却する場合、いつから動くのか
を整理しておくことが重要です。
税金面では「3年10か月以内」が一つの目安になる
相続した不動産を売却する場合、税金面で重要になるのが「相続税の取得費加算の特例」です。
これは、相続税を支払った人が、相続した土地や建物を一定期間内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度です。取得費が増えると譲渡所得が圧縮されるため、譲渡所得税の負担軽減につながる可能性があります。
この特例を使うには、相続や遺贈で取得した財産であること、その財産を取得した人に相続税が課税されていること、そして相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していることなどが要件とされています。
実務上は、相続税の申告期限が相続開始から10か月以内であるため、いわゆる「相続開始から3年10か月以内」が一つの目安になります。
相続税がかかっているご家庭では、この期限を過ぎると税務上の選択肢が狭まる可能性があるため、売却の検討を後回しにしすぎないことが大切です。
空き家の3,000万円特別控除も確認する
相続した親の家が空き家になっている場合、「被相続人の居住用財産、いわゆる空き家を売ったときの3,000万円特別控除」が使える可能性があります。
この制度は、一定の要件を満たす相続空き家を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。2026年5月時点では、対象となる譲渡期間は2027年12月31日までとされています。
ただし、令和6年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上いる場合は控除額が最高2,000万円になるなど、細かな要件があります。
また、国土交通省もこの特例について、空き家の発生を抑制するための措置として、適用期間が2027年12月31日まで延長されている旨を案内しています。
この特例は非常に有効な制度ですが、誰でも使えるわけではありません。
たとえば、建物の建築時期、耐震性、相続後の利用状況、売却金額、取り壊しの有無などによって適用可否が変わります。
そのため、親の家を売る場合は、売却活動を始める前に、税理士や不動産会社へ「空き家特例が使える可能性があるか」を確認しておくべきです。
親が存命中に売る場合の3,000万円控除
親がまだ存命中で、親自身のマイホームとして売却する場合には、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」が使える可能性があります。
国税庁では、マイホームを売ったときは、所有期間の長短に関係なく、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円まで控除できるとされています。
また、すでに住まなくなった家でも、一定の期限内であれば特例の対象になる場合があります。
この点から考えると、親が施設へ入居した後、長期間空き家にしてしまうよりも、まだ特例の検討ができる時期に売却判断をする方が有利になる可能性があります。
ただし、親名義の家を売る場合は、あくまで親本人の意思が前提です。子どもが勝手に売ることはできません。
売却を急いだ方がよいケース
親の家について、次のような事情がある場合は、早めに売却を検討した方がよいケースです。
まず、建物の老朽化が進んでいる場合です。
築年数が古く、雨漏り、傾き、シロアリ被害、擁壁の劣化、給排水管の不具合などがある場合、時間が経つほど売却条件が悪くなりやすくなります。
次に、誰も住む予定がない場合です。
「いつか使うかもしれない」という理由だけで空き家を維持すると、固定資産税、火災保険、草刈り、修繕費、近隣対応などの負担が続きます。
また、相続人が複数いて意見が割れそうな場合も注意が必要です。
相続直後は話し合いができていても、時間が経つと相続人の生活状況が変わり、売却への賛否が分かれることがあります。
さらに、遠方に住んでいて管理が難しい場合も、早めの判断が必要です。空き家の管理は、近くに住んでいないと想像以上に負担になります。
すぐ売らない方がよいケース
一方で、すぐに売らない方がよいケースもあります。
たとえば、親が自宅に戻る可能性が現実的にある場合です。
この場合、本人の生活の場を確保する意味でも、慎重な判断が必要です。
また、相続人の中に住みたい人がいる場合も、すぐ売却するのではなく、代償分割や共有回避の方法を含めて検討する必要があります。
さらに、土地の境界が不明確な場合、私道・越境・未登記建物・再建築可否などに問題がある場合は、売却前に調査や整理をした方がよいことがあります。
不動産は、問題を隠して売るのではなく、問題を整理したうえで売る方が、結果的に安全な取引になりやすいです。
タイミング判断で最も大切なのは「価格」より「リスク」
親の家を売るとき、多くの方は「今売れば高いのか」「もう少し待てば上がるのか」を気にされます。
もちろん価格は大切です。
しかし、親の家の場合、価格以上に重要なのはリスク管理です。
具体的には、
・親の判断能力があるうちに意思確認できるか
・相続人全員の合意が取れるか
・相続登記や遺産分割が進められるか
・税制上の特例期限を逃さないか
・建物の劣化が進む前に売れるか
・近隣トラブルや管理不全を防げるか
という視点です。
不動産市況を完全に読むことはできません。
しかし、空き家化による劣化、相続人間の意見対立、税制特例の期限切れ、管理負担の増加は、ある程度予測できます。
その意味では、親の家の売却タイミングは「一番高く売れる時期を当てること」よりも、「悪い条件になる前に動くこと」が大切です。
親の家を売る前に確認すべきこと
売却を検討する際は、最低限、次の点を確認しておきましょう。
・登記名義は誰になっているか
・親本人の意思確認ができる状態か
・相続後の場合、遺産分割協議は済んでいるか
・相続登記は完了しているか
・境界確認や測量が必要か
・建物を残して売るか、解体して売るか
・空き家特例や取得費加算の特例が使えるか
・家財道具の処分をどうするか
・固定資産税や管理費用を誰が負担しているか
・近隣への越境や私道の問題がないか
特に古い一戸建てや土地の場合、道路、境界、高低差、擁壁、越境、再建築可否などが価格に大きく影響します。
単に査定価格だけを見るのではなく、「安全に売れる状態か」を確認することが重要です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 親が施設に入ったら、すぐ家を売った方がいいですか?
必ずすぐ売る必要はありません。ただし、親が自宅に戻る可能性、施設費用、家の管理負担、親本人の意思確認ができるかを早めに整理することが大切です。空き家期間が長くなるほど建物の劣化や管理負担が増えるため、放置はおすすめできません。
Q2. 親が認知症になった後でも家は売れますか?
売却できる可能性はありますが、手続きは慎重になります。所有者本人が売却内容を理解し、意思表示できることが原則です。判断能力が不十分な場合は、成年後見制度などの検討が必要になることがあります。早めに専門家へ相談することをおすすめします。
Q3. 相続した実家は、いつまでに売るのがよいですか?
相続税がかかる場合は、取得費加算の特例との関係で、相続開始からおおむね3年10か月以内が一つの目安になります。また、空き家の3,000万円特別控除を検討する場合も期限や要件があります。税制の適用可否は個別判断になるため、早めの確認が重要です。
Q4. 兄弟で共有したまま実家を残しても大丈夫ですか?
共有自体は可能ですが、将来の売却、賃貸、解体、修繕の場面で全員の合意が必要になり、意思決定が難しくなることがあります。さらに次の相続が発生すると、関係者が増えて複雑化する可能性があります。実務上は、共有のまま長期間放置することは慎重に考えるべきです。
Q5. 古い家は解体してから売った方がいいですか?
物件によります。解体すると土地として見やすくなる一方で、解体費用がかかり、固定資産税の住宅用地特例にも影響する可能性があります。また、建物があるからこそ買主がリフォーム前提で検討できる場合もあります。道路付け、建物状態、土地需要、解体費用を比較して判断する必要があります。
まとめ
親の家を売るタイミングは、単純に「相場が高いとき」だけで判断するものではありません。
親が存命中であれば、本人の意思確認ができるうちに、施設入居後の住まいの扱いや売却方針を話し合うことが大切です。
相続後であれば、相続税申告、相続登記、遺産分割協議、税制特例、空き家管理の負担を踏まえて、できるだけ早く方向性を決めることが重要です。
特に、相続登記の義務化、空き家の3,000万円特別控除、取得費加算の特例など、親の家の売却には期限が関係する制度が複数あります。
「まだ大丈夫」と思っているうちに、建物が傷み、相続人の意見が分かれ、税制上の選択肢を失ってしまうこともあります。
親の家を売るかどうか迷ったときは、まずは価格査定だけでなく、権利関係、税金、建物状態、売却リスクを含めて総合的に確認することをおすすめします。
親の家は、単なる不動産ではなく、ご家族の思い出が詰まった大切な財産です。
だからこそ、感情だけで先延ばしにするのではなく、早めに現状を整理し、ご家族にとって後悔の少ない選択をすることが大切です。
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【本ブログ監修者】

★柴田祐介(しばた ゆうすけ)
1981年生まれ。群馬県出身。大学卒業後、異業種を経て、その後不動産会社で八王子・町田・川崎にて16年間勤務。
在職期間中の2年間で、建築・デザイン専門学校にて認定単位取得後卒業。
〖保有資格〗
宅地建物取引士、二級建築士、2級FP技能士、秘書検定2級、既存住宅状況調査技術者、相続アドバイザー2級。